アペニン山脈を背骨にして、北から南までは、約1,000kmに及ぶ。
山あり谷あり湖・河川ありで、気候、風土は大きく変化する。そして、その歴史も、ローマ帝国崩壊以降長い間、権力は地方に分散されていたから、同様に地域によって大きく異なる。
この多様な風土と歴史を持つ半島の総ての地域でワインが造られている。
とは言え、ワインをより楽しむためには、飲むことに次ぎ、情報としては、産地を知る事がどうしても必要であろう。それは、産地の気候・地形・土壌に加え、風土がワインの性格を形造ると言うこと。
言い換えれば、ワインが葡萄果実を原料とするもの故に、新鮮で健全で十分成熟した果実を迅速に摘み取り、可能な限り迅速に破し、旺盛な発酵に遅滞なく導かねばならないものであって、時間的・距離的に大きく産地に縛られる唯一のアルコール飲料だと言うことである。
従って、当WEBもイタリア・ワインを産地を各州に分けて、DOC・DOCGを中心にその情報を載せている。
古代ローマ時代からの長く複雑な歴史と文化を背負い、多様で個性的なワインが生産され、現在活況を呈している。 しかし、この今日のイタリアの盛況は20世紀後半からのことである。
一部を除いてその大半は、かっては、殆ど褒められたワインは造ってはいなかった。大部分のワインは瓶詰めされず、日常消費用として国内の町々に出荷され計り売りで販売され、また、大手輸出業者の手でブレンドされて輸出されていたのである。
イタリアがフランス以上に古い葡萄栽培の歴史を持つだけに、見逃しがちな事実である。
イタリアが、フランスのAOC(1935年制定)に倣って、ワインを法的に特定し整備したのは1963年で、「DOC」が定められた。
EUワイン規則
EUレベルでの格付けは、3段階で、それをイタリアの伝統的格付けに当てはめると下記のようになる。現在、イタリアワインの殆どが伝統的表示をしているが、EU表示(DOP&LGP)をしている生産者もいないわけではない。
1.DOP(保護原産地呼称ワイン)= DOCG & DOC
2.LGP(保護地理表示ワイン)= IGT
3.VINO(ヴィーノ)= VdT
*2015年現在、DOCは332銘柄、DOCGは73銘柄があり、栽培地は合せて212,000ha。
DOCワインの上位に位地するDOCGワインは、DOCワインの中で「格別に評価の高い」ワインが持つ権威を国が保証するもので、必ずしも、一般的に言う「力強い偉大なワイン」に限らない。
「ワインに歴史と伝統があり、自然と文化と結びついていて、かつ内外での評価が高い」と言うことが条件である。
2011年現在、73銘柄がDOCGに認定されている。DOCGワインには瓶の頭に検査に合格したことを示す公式シールを貼ることになっている。
国の「保証」という点には批判的な意見もあり、又、現在認定されているDOCGに問題がないわけではない。しかし、DOCGはワインの生産者たちに国の専門試飲委員会による品質管理を義務づけるなどして、ワインの品質を向上させ,また、まがいものを一層造り難くしていることも確かである。
*2011年現在、IGTは118銘柄があり、栽培地は148,000ha.
「サッシカイア」は、国際品種を使い、DOCやDOCGの規定外の造り方をしたワインである。世に出ると、その品質の高さで、たちまち人気を博し、内外の市場で高い評価を受けた。この成功が一つの潮流を作り、「スパーIGT」と呼ばれる数多いワインを生み出していった。
国際品種(赤ではカベルネ・ソーヴイニョン、ピノ・ネロ、メルロー種、白ではシャルドネ、ソーヴイニヨン・ブラン種)を使ったものが大半であが、地元の伝統品種とこれらのブドウを組み合わせたワインも造られている。生産量を抑え小樽での熟成を行うものが殆どである。
これらのワインは、DOCやDOCGの規定外の造り方をしているので、最初は「VdT」のカテゴリーに入れられていた。しかし、「一定地域のブドウを使用していることから「IGT」に組み込まれるようになった。(中には「サッシカイア」のようにDOCに認められたものもある。-1992年産より<ボルゲリDOC>)
価格は日本でも、かって二級酒の位地付けで、高価格な清酒が売られていたのと同じ様に、生産量が少ないこともあって、高価になり、DOCGワインよりも高い価格で売られているものが少なくない。
こうして、「スーパーIGT」と呼ばれる一部のIGTワインの出現により、もともと種類が多く、分かりにくいとされるイタリア・ワインがさらに解りにくくなったことも事実である。
従って、当Webでは、この種のワインを別格に取扱い、以下に、州別に、主要なワインをリスト・アップした。イタリアを南北3つにページ分けしたが、トスカーナはこの種のワインが最初に生まれた地域で数も多いから、別に設けた。リスト作成に当たって、林茂著「最新・基本イタリアワインー増補改訂第3版」を参考にさせて頂いた。