Introduction
長靴の形をしたイタリアは、アルプス山脈を付け根にして地中海に張り出すヨーロッパ大陸の半島である。日本の緯度に当てはめれば、北のアルプスに接する地方は樺太南部、南のシチリア島の南端は金沢に相当する位置にある。

アペニン山脈を背骨にして、北から南までは、約1,000kmに及ぶ。
山あり谷あり湖・河川ありで、気候、風土は大きく変化する。そして、その歴史も、ローマ帝国崩壊以降長い間、権力は地方に分散されていたから、同様に地域によって大きく異なる。
この多様な風土と歴史を持つ半島の総ての地域でワインが造られている。

それ故、造られるワインの種類は驚くほど多い。それがイタリア・ワインの特徴である。
イタリア・ワイン特徴づけるこの多様性は、イタリア・ワインを分かり難いものにしているのも事実で、ワイン名は、産地の地名が一般的であるが、イタリアでは、中世に品種名で呼ばれることが多かったことにもよるが、品種名であったり、歴史や物語からとったものだったりと、分かり難くさに拍車を掛けている。
加えるに、個人主義的なイタリア人気質が、ワイン造りにも反映して、造り手の違いが大きく品質に影響している。従って、ワイン選択に当たっては、常に、生産者による価値判断を余儀なくされている。

とは言え、ワインをより楽しむためには、飲むことに次ぎ、情報としては、産地を知る事がどうしても必要であろう。それは、産地の気候・地形・土壌に加え、風土がワインの性格を形造ると言うこと。
言い換えれば、ワインが葡萄果実を原料とするもの故に、新鮮で健全で十分成熟した果実を迅速に摘み取り、可能な限り迅速に破し、旺盛な発酵に遅滞なく導かねばならないものであって、時間的・距離的に大きく産地に縛られる唯一のアルコール飲料だと言うことである。
従って、当WEBもイタリア・ワインを産地を各州に分けて、DOC・DOCGを中心にその情報を載せている。

 

イタリアの葡萄栽培とワイン生産


世界一をフランスと競うワイン生産国であるイタリアは、年間4,160万hl(2011年)のワインを造り出す。ブドウ栽培農家は80万軒、ワインを造る業者は37,000軒に達すると言われている。
多彩な風土を反映し、その約7割弱が、DOCG、DOC、IGTワインである。

古代ローマ時代からの長く複雑な歴史と文化を背負い、多様で個性的なワインが生産され、現在活況を呈している。 しかし、この今日のイタリアの盛況は20世紀後半からのことである。
一部を除いてその大半は、かっては、殆ど褒められたワインは造ってはいなかった。大部分のワインは瓶詰めされず、日常消費用として国内の町々に出荷され計り売りで販売され、また、大手輸出業者の手でブレンドされて輸出されていたのである。
イタリアがフランス以上に古い葡萄栽培の歴史を持つだけに、見逃しがちな事実である。

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DOCとDOCG

イタリアワイン種類図解

 

イタリアが、フランスのAOC(1935年制定)に倣って、ワインを法的に特定し整備したのは1963年で、「DOC」が定められた。
1980年に、「DOC」の上位に「DOCG」を設けた。

従って、基本的に、「DOCG」「DOC」「VdT」の3つにクラス分けがなされた。そして、1992年、VdTの上位に、生産地の表示を義務付けた「IGT」を新設した。

 

EUワイン規則

EUレベルでの格付けは、3段階で、それをイタリアの伝統的格付けに当てはめると下記のようになる。現在、イタリアワインの殆どが伝統的表示をしているが、EU表示(DOP&LGP)をしている生産者もいないわけではない。
1.DOP(保護原産地呼称ワイン)= DOCG & DOC
2.LGP(保護地理表示ワイン)= IGT
3.VINO(ヴィーノ)= VdT

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DOC(統制原産地呼称)


DOCワインは、産地と使用品種が限定され、生産量も制限規定がある。醸造方法や熟成期間に加え、色調,香り,味わい,アルコール含有量,酸度,その他の基準が定められている。
個々のDOCの規定の詳細は、その地域の生産者たち(品質保護協会等)によって決められ、
その案がローマにある国立原産地呼称委員会に提出され、委員会によって審議・決定される仕組みになっている。

*2015年現在、DOCは332銘柄、DOCGは73銘柄があり、栽培地は合せて212,000ha。

DOCG(統制保証僚産地呼)

DOCワインの上位に位地するDOCGワインは、DOCワインの中で「格別に評価の高い」ワインが持つ権威を国が保証するもので、必ずしも、一般的に言う「力強い偉大なワイン」に限らない。
「ワインに歴史と伝統があり、自然と文化と結びついていて、かつ内外での評価が高い」と言うことが条件である。

2011年現在、73銘柄がDOCGに認定されている。DOCGワインには瓶の頭に検査に合格したことを示す公式シールを貼ることになっている。

国の「保証」という点には批判的な意見もあり、又、現在認定されているDOCGに問題がないわけではない。しかし、DOCGはワインの生産者たちに国の専門試飲委員会による品質管理を義務づけるなどして、ワインの品質を向上させ,また、まがいものを一層造り難くしていることも確かである。

DOCGラベル

VdT(テーブル・ワイン)


VdTは、瓶詰時において,その使用品種,収穫年,原産地の表示の必要のないのもで、EUで認められた品種で、アルコール度が9%以上であれば、何処のブドウを使ってもいい。

IGT(限定産地表示テーブル・ワイン)


IGTは、テーブル・ワインの中の、特定の産地で特定の葡萄品種から造られるワインで、産地(州,県,地域)が特定出来、使用品種が明示されたワインである。同じ品種を85%以上使用すれば品種名も表示できる。(「スーパーIGT」参照)

*2011年現在、IGTは118銘柄があり、栽培地は148,000ha.

スパーIGT
近年、イタリアではIGTのカテゴリーのワインであるが、高価格で売られ、人気を集めるワインが多く生まれた。
これは1968年、トスカーナ中部の海岸に近い地域で造られた「サッシカイア」が登場した事に始まる。

「サッシカイア」は、国際品種を使い、DOCやDOCGの規定外の造り方をしたワインである。世に出ると、その品質の高さで、たちまち人気を博し、内外の市場で高い評価を受けた。この成功が一つの潮流を作り、「スパーIGT」と呼ばれる数多いワインを生み出していった。
国際品種(赤ではカベルネ・ソーヴイニョン、ピノ・ネロ、メルロー種、白ではシャルドネ、ソーヴイニヨン・ブラン種)を使ったものが大半であが、地元の伝統品種とこれらのブドウを組み合わせたワインも造られている。生産量を抑え小樽での熟成を行うものが殆どである。

サッシカイア

これらのワインは、DOCやDOCGの規定外の造り方をしているので、最初は「VdT」のカテゴリーに入れられていた。しかし、「一定地域のブドウを使用していることから「IGT」に組み込まれるようになった。(中には「サッシカイア」のようにDOCに認められたものもある。-1992年産より<ボルゲリDOC>)

価格は日本でも、かって二級酒の位地付けで、高価格な清酒が売られていたのと同じ様に、生産量が少ないこともあって、高価になり、DOCGワインよりも高い価格で売られているものが少なくない。


こうして、「スーパーIGT」と呼ばれる一部のIGTワインの出現により、もともと種類が多く、分かりにくいとされるイタリア・ワインがさらに解りにくくなったことも事実である。
従って、当Webでは、この種のワインを別格に取扱い、以下に、州別に、主要なワインをリスト・アップした。イタリアを南北3つにページ分けしたが、トスカーナはこの種のワインが最初に生まれた地域で数も多いから、別に設けた。リスト作成に当たって、林茂著「最新・基本イタリアワインー増補改訂第3版」を参考にさせて頂いた。

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