BORDEAUX AOC

ボルドーの格付けとAOC

ボルドーのAOCは村名AOCまでで、ブルゴーニュのように、その上の、1級と特級がない。
それは、歴史的に「シャトー・システム」が確立されていて、シャトーのランク付け、つまり、「格付け」がなされているためである。
(シャトー・ワインは、色々なランク付けがされているた畑名ワインと位置付けることも出来なくない。しかし、このシャトーがピンからキリまで無数にあり、ボルドーワインを解り難くしている。)

「シャトーの格付け (Crus Classés )」とAOCは全く別のものだが、敢えて比較すれば、ブルゴーニュのAOCの上級酒:Grandes Crus(特級)、Premieres Crus(1級)に相当すると捕らえるのも一つの方法だと思われる。

正式には、ボルドーワインは、まず「シャトー・ワイン」と「ゼネリック・ワイン」とに分けられる。

 

Château Wine (シャトー・ワイン)

このシャトー・ワインは膨大な数で、 ボルドーワインを一番解り難くしている。
シャトー・システムに則り生産されているから、「手造りの個性的ワイン」であることは間違いないが、ピンからキリまである。中にはゼネリック・ワインに太刀打ちできないお粗末なものも少なくない。零細中小農家であるシャトーが少なくないから、 年により出来不出来がある。

このシャトー・ワインの中で、常に高品質ワインを造っているシャトーを、公的に選び「格付け」がなされ、ラベルにも、「(Crus Classés」と表示し区別している。

この公的「格付け」がなされているのは、下記の4地区である。()内は、制定された年。

1. Médoc (1855年)
2. Sauternes (1855年)
3. Graves (2003年)
4. St-Émilion (2006年)

 

*上記の「Crus Classés格付けシャトー」の詳細情報は、それぞれのACのページに分けて載せた。
Médocについては、それぞれの村名ACの頁に分けて掲載したが、そのリストは、下記をクリックされたし。

Generic Wine (ゼネリックー・ワイン)

「ゼネリック・ワイン」は、 シャトー名のないもので、一般的には、地域・地区・村のAOCの名前が大きくラベルに表示されている。

ボルドーの大手酒商(メーカーやネゴシアン)が、その地区や村の葡萄や樽酒を買い集め、混醸したワインを言う。 当然、他の地区や他の村の葡萄や酒を混ぜることは出来ない。
ワインはその地区や村の性格を反映し、ACの規定に従った一定の水準以上のものである。
AOC上、3種類に分けられる。

  • ボルドー全域のもの・・・<Bordeaux>
  • 地区のもの・・・・・・・<Médoc や Graves>
  • 村のもの・・・・・・・・<Margaux や St-Émilion>
* この村名のものを「セミ・ゼネリック」とワンランク上の呼び方をするのが一般的。

ゼネリックー・ワイン ラベル

 

Médoc Crus Classés (メドックの格付け)

1855年、ナポレオン3世によって、この年の万博の目玉商品として、ボルドーワインの高級品を選び出し、公に格付けされた。

<赤>についてはメドックのものが選ばれ、1級から5級までランク付けがされた。唯一の例外で、グラーブの「オー・ブリオン」が選ばれているが、オー・ブリオンの名声は当時既に轟いていたから無視できなかったからであろう。1973年「ムートン・ロートシルト」が2級から1級に昇格したが、それ以外今日まで一切改訂されていない。
<白>についてはソーテルヌのものが選ばれている。

「Crus Classés」は5クラスに、以下に示すようにランク付けがなされている。(数字はシャトーの数)
なお、そのワインの生産量は、メドック全体の、前者は25%を占めている。

 

Crus Classés

  • 第1級-Premiers Curus : (5)
  • 第2級-Seconds Crus : (15)
  • 第3級-Troisiémes Crus : (14)
  • 第4級-Quatrémes Crus : (10)
  • 第5級-Cinquiémes : (18)

「Crus Classés格付けシャトー」の詳細情報は、それぞれのAOCのページに分けて載せた。

 

栄枯盛衰は世のならいで、約160年を経たこのランク付けは、必ずしも現在の実力を反映したものではない。
しかし、この種の高級ワインは常に専門家や酒商の厳しいチェックに晒されており、取引価格に反映されている。
歴史と伝統を重んじるワインの世界において、星の数程無数のシャトーの中から、<赤>61、<白>26-Sauternes、のシャトーが選び出されているのであるから、ボルドーを代表する最高級ワインであることは間違いない。

一般的には、このシャトーを「ボルドーの格付けシャトー」、ワインを「ボルドーの格付けワイン」と言う。

ラベルには、メドックの<赤>の1級に付いてはPremier Grande Cru Classeと表示され、2級から5級は、総てGrande Cru Classeと表示し、クラス分けの表示はない。

 

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*1855年のこの「格付け」が今日利用されている理由を的確に説明している、「比較ワイン文化考」の著者・麻井宇介氏の一節を、以下に引用させて頂くと、

「・・・・肝心なことは、メドックやソーテルヌに歴史的な分類が今日もなお形式をとどめていること、それはAOCとまったく違うこと、等級の上下が必ずしも品質の優劣をあらわすものでないこと、などについての理解である。
1855年の格付けと今日の評価とは、大局的に見ればそれはど大きな異同があるわけではない。1世紀をこえる昔、当時の取引価格を基礎に定められたこの格付けは、当然品質を反映したものであったであろうし、それはまた人々がどのような嗜好を示したかを物語っていたに相違ない。

100年をこえる時の経過が、この格付けを否定しなかった事実は、重く見なければならない。
風土に根をおろしたワインの性格は、そんなにも確固として抜きさしならぬものなのである。と同時に、この格付けを容認してきたのは、ボルドーワイソを飲み続けてきた人達自身であったこことを見逃してはならない。

すなわち、われわれは二重の意味においてここに「ほとんど動かない歴史」を見るのである。
この100年、世界史はそれ以前のどの時代よりも激動し続けたという実感があるにもかかわらず、歴史過程の一番底には、きわめて緩慢な変化しかしない長期的に安定した層位があることを指摘しておく。
ひとつは風土であり、もうひとつは、食物・習俗といった日常的な生活文化である。人間はこうした深層史に強く拘束される。・・・」

ワインを理解するためのお薦めの「書」の一節である。

 

Cru Bourgeois (ブルジョワ級について)

1932年、メドック地区のシャトーで、1855年の格付けの対象にならなかったシャトーの内、質の高いワインのシャトーのオーナー達が、自分達のワインに付加価値を付けるために、ワイン仲買人に頼んで作った格付けが「クリュ・ブルジョワ」で、444銘柄が選ばれまた。ただし、これは、非公式の格付けだった。
その後の経過の要点を簡単に述べれば、

2003年、政府公認の新しい「クリュ・ブルジョワ」のリストが発表され、3つの等級(クリュ・ブルジョワ・エクセプショネル(Exceptionnel)、クリュ・ブルジョワ・シューペリュール(Superieurs)、 クリュ・ブルジョワ(Crus bourgeois))に格付けされた。が、客観性に欠けるとの指摘があり、発表当初から問題を抱えていた。
2007年、行政裁判所で、正式にクリュ・ブルジョワの格付けが取り消された。
2009年、クリュ・ブルジョワ連盟は、復活に向けての活動を続け、ようやく新しい形での「クリュ・ブルジョワ」が、11月の政令で認められたが、3つの等級に格付けされた等級を廃止し、序列のない”reconaissance(認証)”としての再出発となった。日本語では「クリュ・ブルジョワ認証」と訳されているが、格付けというよりも、品質ラベルといった性質のものである。

が、これも問題がないわけではなく、これまでクリュ・ブルジョワ・エクセプショネル(Exceptionnel)に格付けされていた9つのシャトーが脱退すると言う事態を招いている。

Second Label (セカンド・ラベル)

ボルドーでは、スーマルク(Sous-marque)と言い、文字通り2番手のワインのこと。

ボルドーの高級ワインは、ぶどうの品種別、畑別に醸造し、個別に樽貯蔵する。それらを試飲し、選別したものをブレンドして、シャトー名にふさわしいワインを造る。 この時、選別からもれたワインをさらに選別して、別の名称のワインを造る。これを「セカンド・ラベル」と言う。

概して樹齢の若い木から造ったワインが中心となるので、比較的軽く、早く飲めるタイプになる。主にGrande Crus Classes(グラン・クリュ格付けシャトー)で行われている。

*各格付けシャトーの詳細ページには、このセカンドラベルを付記した。

 

Crus Classés LIST