Languedoc-天然甘口ワイン
WineMap-Vins doux Naturel

ラングドック・ルーション地方は、天然甘口ワインのフランスにおける最大の産地で、国全体の生産量の約90%を占める。

ラングドック地方では、
ミュスカ・ア・プティ・ブラン種のみを用いた<白>が主流である。
一般的に、ミュスカのアロマを最大に保持するためタンクで保存する。その後、若いワインの繊細さと爽やかさを封じ込めるため、早めに壜詰を行っている。

Muscat de Noel(ミュスカ・ド・ノエル)と言う新酒が認められていて、当地でもクリスマス等の祝い事には欠かせない。

一方、ルーション地方では
グルナッシュ・ノワール種を主体とした<赤>が一般的である。熟成方法も異色な伝統な方法で行っている。

3~6週間マセラシオンを行った後にミュタージュを行う。 (白とロゼは皮を取り除いた果汁の発酵途中にミュタージュを行う) そのアルコール添加のタイミングを変えることによって、甘口、半甘口、辛口の3つのタイプを造る。その後、数年から時には数十年掛けて熟成させる。熟成方法の違いによって、特徴の異なるワインを造っている。

天然甘口ワインは、ミュタージュ(Mutage)という技法で造られる。果汁の発酵途中にブドウを原料とする強いアルコールを添加して発酵を止め、ブドウの自然な甘みを残す技法である。
この技法は,モンペリエ大学の医学者・アルノー・ド・ヴィラノヴァ(Arnaude Vllanova)が13世紀に発明し、糖度の高いブドウ栽培をしていたルション地方で特に発展した。

*残念なことに、この「天然甘口ワイン」 は、この素晴らしい地域を最も独特に表現しているワインだと思われるが、現在、その生産は危機的な状況にあることである。

 


 

AOC詳細

Muscat de Frontignan ミュスカ・ド・フロンティニャン

Frontignan

このACの産地は、モンペリエの南西、地中海沿岸の港町・セート寄りにある。
地中海性気候で、背後に標高200mの山塊によって北風から守られるから、ミュスカ種の栽培に適している。「ヴァン・ドゥー・ナチュレール」と共に、「ヴァン・ド・りクール(リキュール・ワイン)」も造られている。生産量も多く、一番広く知られている生産地。
AC名は<Vin de Frontignan>or< Frontignan>とも表記される。 

生産量
20,131hl(797ha)

 

Muscat de Lunel

(ミュスカ・ド・リュネル)

ームとモンペリエの間に産地は広がる。標高60mの丘陵に緩やかな起伏を持つ畑で、海から適度な湿気がもたらされる地中海性気候。

生産量
8,973hl(321ha)

 

Muscat de Mireval

(ミュスカ・ド・ミルヴァル)

モンペリエの南、地中海沿岸に畑がある。夏の乾燥した暑さを、海や潟が近いから湿気で和らげてくれる。 

生産量
7,166hl(260ha)

 

Muscat de Saint-Jean-Minetvois

(サン・ジャン・ド・ミネルヴォワ)

このACの産地は、ACミネルヴォワの北東部の端の内陸部にあって、他の産地より標高が高く、250~280mにあるから、収穫も遅れるが、よりシャープさがます。

生産量
6,203hl(185ha)

Riversaltes リヴァザルト

Riversaltes

地元のカタルーニア語で、「川の上流域」を意味するリヴァサルト村を中心とする94ケ村を含むのがこのACで、ルーションの<ヴァン・ドゥ・ナチュレール>の産地の中で生産量が最も多い。
酸化熟成期間や壜詰め時期の違いで多様なワインを造っている。一般的には<バニュールス>の格下と言われている。

生産量
 131,943hl (5,240ha)

 

Muscat de Rivesaltes

(ミュスカ・ド・リヴァサルト)

このACは、ルーションの<バニュルス>・<モーリー><リヴァサルト>のAC生産地区で、ミュスカ種100%で造る<ヴァン・ドゥー・ナチュレール (天然甘口ワイン)>に適用される。
生産量
114,100hl(5,309ha)

なお、使用品種で、ミュスカ、グルナッシュ、マカブーなどを使い、このACの規定より緩やかなもので、格下のACがあり、<Grand Roussillon (グラン・ルーション)>を名乗る。
生産量
43,289hl (1812ha)

Banyuls バニュルス

Banyuls

スペイン国境の岩だらけの段丘にある畑で栽培され、ほとんど干しブドウ化したものから造られる。
天然甘口ワインの中でも、とりわけ濃厚なもの。ルーションの<AC・コリウール>と産地を同じくする。

若いワインを大型のガラス容器か樽に入れ、灼熱の太陽光線に数ヶ月さらす。
その後カーヴに移して更に熟成させる。熟成時、樽に蒸発分のワインを補わず空気に触れさせる。その結果、酸化と加熱が造る異色な珍品が生まれる。

ワインの色調は、淡い赤から深い茶色まで様々に変化。味は干しブドウ風味が強く、時にナッツ風味を帯びる。
この熟成方法を<Banyuls Traditional(バニュルス・トラディショナル)>と言って、バニュルスでは一般的に行われている伝統的方法である。

  • 品種
     
  • 生産量
     18,449hl (898ha)

 

Banyuls Grand Cru


(バニュールス・グラン・クリュ)
最低30ヶ月の樽熟成を課せられている。 生産者の多くは、さらに数年追熟させて、濃厚で蜜のようだがバランスのとれたワインに仕立てる。
食通の多くが、チョコレートの伴侶として太鼓判を押すもの。

生産量
 3,495hl (898ha)

Maury モーリー

Maury

ルーションの首都・ペルピニャンから北西30kmに位置するアグリ川上流の丘陵地帯にこのACの畑がある。
畑のすぐ前には、白い岸壁がむき出しになった荒々しいコルビエールの山がそびえる。

ワインは<バニュールス>の弟格と言われるが、生産者によっては、見劣りしないものもある。
又、熟成時、更に酸化を推し進め、甘く華やかで、アーモンドやクルミのような芳醇で複雑な香りを持つこの地のワインは、<Maury Rancio(モーリー・ランシオ)>と言う別のACを名乗っている。
マディラ酒のような甘く焦げた風味を持っている。

生産量
 11,185hl (561ha)