ロンバルディア州は、アルプスの山々と大河ポーとに挟まれて、豊かな自然に恵まれた州である。
北部のスイスと接する絵のように美しい湖水地帯は保養地として、南部のポー河に至る平原は穀倉地帯として、共に欧州有数である。州都・ミラノは、ローマ時代からこの地方の中心で、現在でも、食品・薬品・機械などの工業やファッションの発信地として、イタリア商工業の中心的位置を占めている。
古代ローマ時代の末、ゲルマン民族の大移動期、この地方に侵入定着したランコバルト族の名を州名に残しているこのロンバルディア州はイタリアで最も富裕な州でもある。
葡萄栽培地域は、北部ヴァルテッリーナ渓谷、イゼオ湖南の丘陵地帯、ガルダ湖南岸、ポー河に近いパヴィア周辺の丘陵地帯に限られている。隣接するヴェネトやエミリア・ロマーニャ州に比べ生産量は少ないが、古代ローマ時代からワインを造っていて、品質面では優れたワインを生み出している。
産するワインの詳細情報は、以下に記す。
ヴァルテッリーナ渓谷の南向きの岩地の段状の畑に植えられたネッピオーロ種で、古くから造られているワインである。
気候の厳しいヴァルテッリーナ渓谷は、古代からのアルプスを抜ける重要な交通路で、峠を越えた北方の国の人々に人気があったワインである。
やや薄いルビー色で、熟成に従いガーネット色を帯びる。上品な果実香を含み、熟成にしたがい滑らかさが出てくる。いいヴィンテージのものは10年、スペリオーレで20年の熟成に耐えるものもある長熟タイプ。
主生産者
Negri, Perizzali, Conti Sertoli Salis, Polatti,
(ネグリ、ペリッツァーリ、コンティ・セルトリ・サリス、ポラッティ)
ヴァルテッリーナDOCの標記はValtellina Rosso or Rosso di Valtellina
以下の2つのDOCGワインがある。
主生産者
Negri, Pellizzatti, Rainoldi Aldo, Conti Sertoli Salis,
(ネグリ、ペリッツァッティ、ライノルディ、コンティ・セルトリ・サリス)
ラベルに地域名を表示できる以下の5つの特定地域がある。
「強化した」という意味のこの呼称は、葡萄を半乾燥させてアルコール度を14%以上にする醸造方法を取ったもので、ワインはコクのある豊かなボディーを持ち,色調はルビーからガーネット色。
強い香りを持つ。10年以上熟成でき,良い年のものは20年以上の熟成に耐える。ヴァルテッリーナの中では最良のものとされている。
1600年代この地方に城を築き治めていた領主・サリス家の資料によれば、このワインは、1700年代初頭に既に城内で造られていた。生産量が少なかった貴重なワインで、薬のような扱いをしていたと言われている。今日でも建物の最上階の風通しのいい、ソライと言われる部屋で、棚(フィエニーリと呼ばれる)にのせて、3ヶ月ほど乾燥させる伝統的な方法で行われている。
主生産者
Negri, Plozza, Rainoldi Aldo, Conti Sertoli Salis, Nera,
(ネグリ、プロッツァ、ライノルディ・アルド、コンティ・セルトリ・サリス、ネーラ)
古典的方法で造るイタリア最良の発泡性ワイン。ワインはシャンバーニュと同じ様に産地名「フランチャコルタ」によってのみ識別できる。
「フランチャコルタ」はミラノの東にあるイゼオ湖の南の2~400mの丘陵地帯。毎年800万本以上生産されるが、その品質は全体として優れている。
フランチヤコルタの法定熟成期間は、シヤンパーニュより長く,販売に先立ってノンヴインテージの場合には醸造所で25ヶ月の熟成を要し,そのうち最低18ヶ月は二次発酵後の瓶内で熟成する必要がある。また,ヴインテージ付きの場合にはそのヴインテージのワインが85%以上で、熟成は収穫の時から37ヶ月を必要とする。そのうち,30ヶ月は瓶内熟成。
フランチヤコルタは3種類あって、
タイプは4種。
1.brut〈ブルット-辛口〉
2.extra dry(エクストラ・ドライ-薄甘口)
3.demisec(ドミ・セツク-中甘口)
4.sec(セック-甘口)
しかし、大部分の「フランチヤコルタ」はbrut〈ブルット-辛口〉で,仕上げのための「門出のリキュール」は添加しない。
extra brut(エクストラ・ブルット)
pas dose(パ・ドゼ)
dosage zero(ドサージュ・ゼロ)
などと標記されている。
主生産者
Berlucchi, F.Berlucchi, Bellavista, Il Mosnel, Ca’del Bosco,
(ベルッキ、フラテッリ・ベルッキ、ベッラヴィスタ、イル・モスネル、カ・デル・ポスコ)
この同じ地域て造られる非発泡性のワインは以下のDOCを名乗る。
主生産者
La Prendina, Aurelia, Ca dei Frati, Costaripa, Provenza,
(ラ・プレンディナ、アウレーリア、カ・ディ・フラティ、コスタリパ、プロヴェンツァ)
産地は、ブレーシャ県ガルダ湖の西から南に掛けての丘陵地帯。この地域の畑は古く、ガルダ地域のワインのリーダー格。グロッベッロ種主体で、サンジョヴェーゼやバルベーラを混ぜて造る<赤>。濃いルビー色でスパイシーでまろやか。タンニンは中程度で飲み易い。この地方では「ギャレット」と呼ばれる<ロゼ>もある。
主生産者
La Prendina, Comincili, Costaripa,
(ラ・プレンディナ、コミンチョーリ、コスタリパ)
このワインは、1950年代にヴィスコンティ・ディ・ディゼンツァーノによって世界に知られるようになった。
主生産者
Zenato, Lamberti, Ca dei Frati, Ottella, Provenza,
(ゼナート、ランベルティ、カ・ディ・フラティ、オッテッラ、プロヴェンツァ、バラルディ)
州南部、ポー川の南側、アペニン山脈にさしかかる丘陵地帯は、「オルトレポー・パヴェーゼ」と呼ばれ、古くからの葡萄産地で、現在この州の半分以上のワインを生産している。
19世紀初頭を境に、それまではピアモンテのワインの原料として使われていたのだが、ミラノの庶民のワインとして知られ親しまれるようになった。
ワインは使用品種も多く、<赤・白・ロゼ・スプマンテ>と多種多様の日常酒。主な品種は、赤はバルベーラとボナルダ種、白はリ-スリング・イタリコとピノ・ネロ種主体で、半分以上。多くはステンレスタンク醸造の若飲みタイプ。
発泡性の<スプマンテ>も人気があり、ピノ・ネーロ種主体で造られ、タンク内二次発酵のものが900万本、瓶内二次発酵(Talento-タレントと呼ばれる)のものは100万本程度造られている。
「Buttafuoco-ブッタフォーコ(火縄銃)」や「Sangue di Giuda-サングェ・ディ・ジュダ(ユダヤの血)」などユニークな名前を持つ赤ワインがあり、3~4年が飲み頃だが、中には長命のものもある。
主生産者
La Versa, Le Fracce, Ca di Fara, Monsupello, Martilde,
(ラ・ヴェルサ、レ・フラッチェ、Ca di Fara、カ・ディ・ファーラ、モンスペッロ、マルティルデ、)
Oltrepo Pavese Metodo Classico
(オルトレポー・パヴェーゼ・メトード・クラッシコ)
2007年 DOCGに昇格が認められた。
リグーリア州との州境の若干海抜の高い(350m)丘陵地帯のワインで、Pino Nero種主体の古典的醸造で造られる<スプマンテー発泡酒>がリードし、<辛口白><ロゼ>も認められた。
モスカートの亜種である土着品種のモスカート・ディ・スカンツォ種100%造られる甘口赤。
葡萄収穫後、糖度を上げるため陰干しして造られる<パッシート>。2年間の熟成を行う。
生産地は,Franciacorta(フランチャコルタ)の北、スカンツォロシャーテ市の一部に限定されている。(地図には表示されていない)
葡萄畑の総面積は31ha程度で非常に小さい。生産良も少なく、60,000本程度(年)。