トリノはイタリア諸都市の中でも最も美しい市街地を誇っている。本質的には農業州で、豊かな雪解け水に支えられ、国内一の米作地帯として、又有数のチーズの産地として発展して来た。
ワインの生産量では、全20州の第7位に過ぎないが、そのDOC(G)の数はイタリア最大で、トスカーナと共に、イタリアの誇る2大名醸地の一つである。
ピエモンテと言えば、「バローロ」「バルバレスコ」が世界的に有名だが、品質の高さと多種多様なワインを生み出すイタリア一番の土地である。
下記にそのDOCGと主要DOCの詳細情報を記します。
アルバはトスカーナのサン・ジミニャーノと同様に塔の町として知られ、周辺で造られるピエモンテの著名なワインの集散地である。
白トリュフでも有名で、秋には欧州各地からグルメが押し寄せる。
「バローロ」を生み出すネッピーロ種はピエモンテ地方を中心に古くから栽培されてきた品種で、13世紀の古文書に登場する。遅摘みで冷涼な気候を好むため栽培が難しいと言われている。
頑強なタンニンを持ち、長期熟成によってその本領を発揮するワインである。しかし、近年その製造法は大きく変化し、1990年代以降生産者の多くが小樽による熟成に変えたことによって、若くても飲めるものが生まれている。
ワインは、一般的にあまり濃くないルビー色であったが、近年濃いものが増えてきた。個性的な香りを含み、洗練された調和を持つ赤ワインである。ワインの70%は輸出されている。
バローロはその多くが単一葡萄園で造られている。ブルゴーニュのコート・ドールのように、生産者も多く、整然と区画された葡萄畑「クリュ」が眺められる。
主生産者
Ceretto, Pio Cesare, Giacomo Conterno, Aldo Conterno, F.Oddero, Michele Chiarlo, Conterno Fantino,
(チェレツト、ピオ・チェ-ザレ、ジャコモ・コンテルノ、アルド・コンテルノ、フラテッリ・オッデーロ、ミケーレ・キァルロ、コンテルノ・ファンティーノ)
バローロと同じネッビオーロで造るワインは、頑丈で,厳しく、優雅な面を持つ点ではバローロと共通しているが、最強のバローロには及ばなため、一般的には、「バローロの弟分」として知られている。
ブーケを強くするための樽と瓶での熟成(4~8年)も、バローロより少ないが,しばしば、バローロ以上の繊細さと調和の取れた品質を備えている。
生産者では、モダニストのアンジェロ・ガイヤと伝統主義者のブルーノ・ジャコーザが最高の評価を得てきたが,現在ではプロドゥットーリ・デル・バルパレスコ,マルケージ・ディ・グレーシイ,それに規模は小さいながら少数の生産者たちが賞賛されている。
大部分の「バルパレスコ」はタナーロ川の南の傾斜面にある単一葡萄園「クリュ」の選ばれた葡萄で造られている。
主生産者
Gaja, Marchesi di Gresy, Ceretto, La Spinetta, Bruno Rocca, Bruno Giacosa,
(ガイヤ、マルケージ・ディ・グレジィ、チェレット、ラ・スピネッタ、フルーノ・ロッカ、ブルーノ・ジャコーザ)
北部ガティナーラ村周辺の標高400mの丘陵地(氷河によって作られた堆積土壌)で、ネッピーロ種90%以上使用し、ボナルダ種を加えて造られる<赤>。
長熟ワインで5~12年が飲み頃だが、中には20年以上の熟成に耐えるものもある。
輝くようなガーネット色。キイチゴの香り熟成に従いスミレの香り。アーモンドのソフトな苦味を持つしっかりしたワイン。
生産量は45万本と少ないが、その60%がアメリカ、ドイツ、日本に輸出されている。
ワイン造りは古く、古代ローマ時代からで、アンフォーラや葡萄収穫時の厳しい規定などが描かれた文書が見つかっている。
主生産者
畑はピエモンテ北部のゲンメの村周辺。ネッピーロ種75%以上使用し、ボナルダ種を加えて造られる<赤>。
ガッテナーラに並ぶピエモンテ北部の長熟ワイン。
ガーネット色で熟成に従いオレンジ色を帯びる。スミレを思わせる独特の香りを持つ力強いワイン。
生産量は非常に少なく、殆どが国内消費。
ゲンメにおけるワイン造りの歴史はピエモンテ地方で最も古いと言われている。古代ローマ以前のエトルリア人のものと思われる紀元前7世紀の葡萄の種が発見されている。
主生産者 Cantalupo, Bianchi, Zannetta,
この品種は、酸が弱くバランスに問題があったが、チェレット社やブルーノ・ジャコーザ社などの努力により、今日ではわずかにガスを感じさせるバランスの取れた味わいのワインとして人気を得るようになった。
ワインはやや薄めの麦藁色で、独特のデリケートな草や花の香りを含み、果実味があり、旨味を含んだワインになる。殆どの場合、単醸されるが、時にはコルテーゼ種やファヴオリート種などと混醸されることもある。
主生産者
モンフェッラート丘陵のアックイ、テルメース、トレーヴィ地域で、ブランケット種100%で造られる<甘口赤ワイン>。殆どが発泡性に仕上げられる。
生産量は560万本と、同地方で造られる甘口の<アステイ>や<モスカート・ダステイ>とは比較にならない量である。しかし、独特で濃厚な味わいで、近年人気を得ている。
ブラケット種のオリジンについては、はっきりとしたことは分かっていないボアステイからモンフエツリーニにかけての地域で生まれたと言われている。
ブラケット種はワインにすると濃いルビー色で、麝香やマスカット、バラの花などの香りを含む。より強い香りと甘さを得るために陰干しされることもある。このワインは1970年頃までほとんど忘れ去られたDOCワインであったが、モンタルチーノのバンフィ社がこの地域でブラケットを造り始めてから品質も向上し、1997年、DOCGに認められた。
主生産者
1993年にDOCGに昇格したこのワインはイタリアでもっともよく知られたSpumante(発泡性ワイン)。
「Astie(アスティ)」は、白の辛口から甘口まであるスパークリングワインで、「Moscato d'Asti(モスカート・ダスティ) 」は弱発泡性の甘口白ワイン。
両者ともモスカート・ビアンコ100%で造る。アステイ,クーネオ,アレツサンドリア3県の南モンフェツラート,東ランゲ両地方の広大な地帯の険しい丘陵で栽培され、その生産量は年間6万キロリットルで、上級ワインの中でもキャンティに次ぐ。
「アスティ」は、カネッリの町に集中している大手生産者によって造られている。
大量に処理する設備を持っている大手生産者の技術は、清澄済みの果汁をアルコール(7~9%)と残存糖分(3~5%)のバランスが完全な形になるまで密閉したタンクの中で低温で発酵させるというものである。その結果、さわやかな甘さと程よい力強さと生き生きしたアローマとを持つワインが出来る。
タイプの違いはあるが、その品質はDOCGという名目の下で、厳密に管理されているので均一である。
生産されたワインの約75%がアメリカ,イギリスそれにドイツなどに輸出されている。かっては、「貧乏人のシャンパン」などと言われた時期もあったが、近年、品質向上目覚しくそのイメージは払拭された。
「Moscato d'Asti(モスカート・ダスティ)」は、殆どが、アルバとカネッリの間の標高の高いランゲ丘陵の小規模農園で造られている。
ワインのベースは、アステイ・スプマンテと同じものであるが,いっそうのアローマと風味を保つために、普通はモストをフィルターに掛け、発酵はアルコール度が5~6%に達すると止められる。この方法は甘いワインを造るが、炭酸ガスはガス圧がより少ないフリッザンテとやや多いクレマンの中間のレベルになる。その新鮮な風味はクリームのような生地と結びついて、“通”向きのものになる。
主生産者
Cortese di Gaviとも標記される。
ピエモンテ南部のガヴィの町を中心にコルテーゼ種から造られるワイン。<辛口白とスプマンテ>。
Cortese(コルテーゼ)種は、1870年頃からブドウの研究家グループによって認められ、20世紀初めのフィロキセラ禍以降、飛躍的に生産量が増大した。寒さには強い品種ではあるが、南向きの畑での栽培が条件とされる。
1970年代~80年代にかけて、このワインは世界中で知られるようになった。それは、「黒ラベルのガヴィ・ディ・ガヴィ」で知られるラ・スコルカ社のヴィットリオ・ソルダーティの功績によるところが大きい。
オーク樽を使うワインはまろやかさと厚みを持ち、総体的に水準が高く、1998年DOCGに昇格した。
ワインは、 麦藁色で、繊細かつ上品な香りとシャープな酸味を持つ調和の取れた辛口で、イタリアで最も人気のある白ワイン。
主生産者 La Scolca, Villa Spalina, Contorattoi, Castello di tassarolo,
ピエモンテの赤ワインの約半分は、このバルベーラ種で造られていると言われ、古くから北イタリアの人々に愛されてきたワインである。
バルベーラ種は、モンフェラートに始まる品種と言われているが、古い資料が残っていない。
もともとサヴォイア家の領内で甘口ワイン用に栽培され、当時ミラノを支配していたオーストリア人に売られていたと言う。
濃いルビー色で、特徴的なスミレの香りを含み、酸のはっきりした個性のある味わいで、近年、オークの小樽を使う傾向にあって、長期熟成の可能性秘めた洗練さを見せている。
地図に示したが、2つが2008年DOCGに昇格が認めらた。
主生産者
Roberto Voerzio, Gaja, Ceretto, Pio Cesare,
(ロベルト・ヴォエルツィオ、ガイヤ、チエレット、ピオ・チェーザレ)
モンフェラート丘陵地帯。バルベーラ種にフレイザ、グリニョーリ、ドルチェット種を15%まで加えることが認められているので、他のものより飲み易い、軽いものが作られる。4年以内が飲み頃の若飲みタイプが多い。
このSuperiore(スペリオーレ)のみ、2008年DOCGに昇格した。
表記は、Barbera del Monferrato Superiore
主生産者
Colonna, Angelino, Accornero,
(コロンナ、アンジェリーノ、アッコルネーロ)、
2008年、DOCGに昇格した。
アスティからアレッサンドリア県に掛けての地域。生き生きとしたフルーティーさが特徴で、大部分は若飲みタイプ。中には、豊かな構成の長熟のものもあるが、何せ、広大な地域で大量に生産されるから、ワインのスタイルは多様である。
主生産者
Michele Chiarlo, Bertelli, Braida, Prunotto, Bave,
(ミケーレ・キアルロ、ベルッテリ、ブライダ、ブルノット、バヴァ)
ランゲ地方の上記に示す地域で造られる<ドルチェット種>100%の<赤ワイン>は、若々しいルビー色で、果実香豊かで適度のタンニンを持ちながらソフトな口当たりのフルボディ。
一般的には若飲みタイプだが、造り方によっては熟成にも耐える。
<ドルチェット種>は、ピエモンテ南部のオルメア、アックイ地方で栽培が始められた品種で、18世紀にその生産地域が大幅に広がった。
以下に示す3つの地域が、DOCGへ昇格が認められた。
・<Dolcetto di Ovada>の <Superiore> (2008年)
・<Dolcetto di Diano d'Alba> (2010年)
・<Dogliani> (2011年)
主生産者
主生産者
主生産者 Bersano, Cascina monreale, Baretta,
2008年、<Superiore(スペリオーレ)>のみDOCGに昇格した。
表記は、<Dolcetto di Ovada Superiore>
主生産者
La Guardia, Tacchino Luigi, Bergaglio, Renzo Semino,
(ラ・グァルディア、タッキーノ・ルイジ、ベルガリオ、レンツォ・セミノ)
アルバの南ディアーノ・ダルバ地区。最初に公認されたドルテェットの葡萄園で知られている。ドルチェットの中では熟成にもむき、より上質と言われていたが、2010年DOCGに昇格した。
主生産者
Gigi Rosso, Paolo Monte, Il Palazzotto, Giovanni Abrigo,
(ジジ・ロッソ、パオロ・モンテ、イル・パラッツォット、ジョヴァンニ・アブリコ)
<Dogliani or Dolcetto di Dogliani Superiore>が2005年DOCGに昇格したが、DOCであった< Dolcetto di Dogliani> と<Dolcetto delle Langhe Monregales>の2つも包括して、2011年DOCGに昇格した。
「DOCG・ Dogliani(ドリアーニ)」を名乗ることになった。
主生産者
Quinto Chionetti & Figlio, F.Pecchenino, Gillardi, Il Colombo, Cascina Monsignore, Bricco mollea,
(クイント・キオネッティ・フィーリオ、F.ペッケーニ、ジッラルディ、イル・コロンボ、カッシーナ・モンシニョーレ、ブリッコ・モッレア)
北イタリアの大都市の庶民の家庭料理に合うワインとして親しまれてきた。
以下の2つの地域がDOCとして認められている。
主生産者 La Marina, Cocito Dario, Brema,
主生産者
2010年にDOCGに昇格した。
Alta Langa(アルタ・ランゲ)とは、「高い丘」を意味する。
ピエモンテ南部のタナーロ川右岸の、クーネオ県、アスティ県、アレサンドリア県で造られる、瓶内二次発酵によるスパークリング・ワイン。
使用品種は、シャルドネとピノ・ネーロ種を90~100%使う。白とロゼがある。
主生産者
産地は、カスタニョーレ・モンフェッラート丘陵。
土着の神秘的といわれる特殊品種・Ruche(ルケ)種で造る個性的な赤ワインで、この地方では、昔からこの品種で造ったワインは、特別な席でふるまわれる高貴なワインとして知られていた。
ルビーないしヴァイオレットの色調で、華やかで香りで高いタンニンが特徴で後味に苦味が残る。
ミディアムボディの辛口が多いが、甘口のパッシートもできる。
多くは若飲みタイプが造られるが、スカルバ社の造るものは評価が高く、4~5年で独特な優雅さを見せると言われている。
2010年DOCGに昇格。
主生産者
2010年DOCGに昇格。
土着品種・エルバルーチェ種100%で造るのフレッシュな<辛口白>。良質で、おおらか、口当たりのピチピチ下味わいを持つ。若飲みタイプ。
産地は北ピアモンテ。トリノの北、Biellaとの中間に位置する。
ルイージ・フェツランド、チェック、ファヴァーロ、オルソラーニ、ヴイツトリオ・ボラット社のものがよく知られている。
*Erbaluce(エルバルーチェ)種:
顆粒は中程度の大きさで扁円形。果皮は黄緑色でやや厚め。乾いた麦藁色。若草などの繊細な香り。味わいは柔らかく、軽い苦味を伴う。
アルプス山麓に起源を持つと言われているが、古代ローマ人がFianoの一種をピアモンテに持ち込んだものとも言われていて、ピアモンテ品種の中では最も古い品種の一つ。