Introductio チリ・ワイン
チリワイン

Introduction

チリは、東にアンデス山脈、西に太平洋、北にアタカマ砂漠、南に南極大陸に囲まれている。
この周囲を囲む自然環境がフィロキセラの侵入を防いできたと言える。フィロキセラに侵されない唯一のワイン生産国である。

チリ以外の国では、フィロキセラに耐性のある台木に接ぎ木した苗を使うが、チリでは葡萄は自根で成長できる。つまり、新しい畑を作る時切り枝を地面に挿すだけでいい。チリの一つの特徴である。
安定した地中海性気候のチリでは、ほとんど汚染のない乾いた空気の中、日々陽光が降り注ぐ。この環境特性に適する葡萄を19世紀に移植した事が、今日のコスト・パフォーマンスのいいチリワインを生み出している最大の要因である。

20世紀末の輸出ワインの主力だったカベルネ、メルロー、カルムネールに、最近では、シラー、ピノ・ノワール、マルペック、ソーヴイニヨン・プラン、シャルドネ、それに、ゲヴュルツトラミネール、リースリングまでも加わり、日本でも多様なチリワインが輸入されている。(日本への輸入量は、近年フランスを抜いて第1位)

チリワイン産地の、北部Elqui(南緯30度)から最南端のMalleco(南緯38度)までの緯度は、北半球の緯度にはめれば、仏:ボルドーから西アフリカの国:マリに達する南北1,400kmにも及び、欧州のワイン産地のはるか南に位置し、相当暑く良質のワインは生まれにくい地域のように思われる。しかし、寒流のフンボルト海流の流れる太平洋と冷気を吹き下ろすアンデス山脈の影響を受けて、緯度から想像するよりはるかに涼しい。しかも、昼夜の寒暖の差が極めて大きい。
これがチリの葡萄栽培地の特徴で、明快な果実香や凝縮度に寄与し、多様で、良質なワインを生み出している。

チリの公式ワイン地図は行政的に南北のアベラシオンに分かれているが、栽培地の実際の土壌や気候条件は、その地勢および太平洋やアンデス山脈との距離に応じて相当に異なる。ワインの質は、東西の影響をより大きく受けることが最近強く認識されている。

葡萄栽培地としてチリの自然の欠点は、夏期に事実上雨が降らないことである。農家は早くからこの間題に気づいていて、精密さには欠けるものの、運河と溝のネットワークをめぐらし、毎年アンデスの雪解け水を畑に注いできた。この港漑方法もドリップ式潅漑に転換され、良質ワインの生産に寄与している。

 

産地情報を地図で示すように北部から、

Coquimbo Rergion


中央部のフンボルト海流の影響を受ける太平洋側の、

Aconcagua Rergion


とアンデス山脈の冷気の影響を強く受ける、

Central Valley Rergion


パタゴニア地方に繋がる南部の、

South Rergion


にページ分けした。

Central Valleyの気候

lin

 

ラベルの読み方
ラベルの読み方

チリには、フランスのAOCような厳格で明確な格付け制度は無いが、チリワインが国際的に評価を高めてきたことに伴い、1995年 農業保護庁農牧局により。新しく原産地呼称法が施行された。

それにより、ラベル図解に示すように、
・品種
・収穫年
・生産地
の表記は、それぞれが75%以上であれば表記可能であったが、輸出向けワインの場合は85%以上でなければならないことが規定された。

以下に、そのための捕捉情報を記述した。

チリワインの種類 (ワイン法の上で、3種類に分けられる。)

(1)原産地呼称ワイン
DO-Denominacion de Origen
原産地を表示したもので、上記のラベルのように、その他品種等が表示されたもの。
*フランスのAOCは狭い原産地呼称(畑名等)の方が格上で高級と言えるが、チリの場合は狭い原産地呼称(上記のPuenteAltoのようなエリア)の知名度が低いため、広い原産地呼称(上記の場合はMaipoValley)を選んでつけている場合の方がむしろ多い。

(2)原産地呼称の無いワイン
葡萄品種は指定されているが、産地はチリ国内で生産さてたものであれば可で、それを混合して使ってもいい。従って原産地のラベル表示は無い。ラベルに品種を表示する場合は、混合した場合でもその品種が75%以上である必要がある。

(3) テーブルワイン
食用葡萄で造られたものであれば何を使っても可。品種・品質・収穫年のラベル表示は不可。

一般用語のチリワインの種類

ヴァラエタル


とは、一般的に、単一の葡萄品種で造られ、オーク樽での熟成をしていないワインを指す。最もシンプルなベースのワイン。ラベルにはヴァラエタルとは記載されず、品種名だけが記載されている。

レゼルバ-Reserva


とは、一般的には、オーク樽での熟成を行っているワインである。
(但し、白では、樽熟成をしていないものがあり、特有かつ独自の風味特性を持つ、という意味で、レセルバと表示さている場合もある。)
レセルバは、単一品種だけで造る場合と、複数の品種を混ぜて造る場合がある。前者の場合は、品種の特長を生かしたものになり、後者は、各ワイナリーがいろいろな品種をそれぞれ独自の割合でブレンドしたのもので、生産者の個性を色濃く反映している。
このレゼルバには、より上級ワインに、格上げ名称(アルコール度が少し高い)があり、
Reserva Especial」「Grin Reserva」等と言う言葉が使われている。
この「Reserva」と言う品質補足表示語は、ラベルには記載してもしなくてもいいことになっている。

プレミアム


それぞれ各ワイナリーの最上位クラスのワインを「プレミアムワイン」と呼んでいる。しかし、ラベルにはこの記載は無いからラベルからは判断できない。その代り、そのワイン専用のブランド名が付けられいるのが一般的である。従って、そのブランドが、最上位クラスのワインであるかどうかは、そのワーナリーの製品ラインアップから判断するしかない。
品 種
チリの主要栽培品種は、アメリカやオーストラリア等新世界に共通する「国際品種」と呼ばれる品種である。殆どのチリ・ワインはこの「国際品種」で造られている。
ボルドー生まれではあるが、今やチリ特有の品種は、カルムネールであろう。

Carmemere (カルムネール)


ボルドー生まれの歴史的な晩熟の品種だが、現在ボルドーでは殆ど見られない。
チリでは一般的だが、それは1850年代にヨーロッパを襲ったフィロキセラによって、ボルドーの葡萄の樹が全滅する前に、チリが輸入した苗木が育っているからである。

長い間、メルローと混同されていたが、現在では、きちんと区別して栽培されている。
未熟のカルムネールは緑色のトマトの葉のような風味を帯びるから、それを避けるために、完熟させる必要があるが、そうして生まれたワインは常に深い色調を帯びる。

一般的にカルムネールは、他のボルドー種とブレンドする時その持ち味を発揮すると言われているが、チリでは、個性的ですばらしいカルムネール単品種のワインが生まれている。

チリ以外では、イタリア東北部で栽培されている。

 


国際品種
Cabernet Sauvignon
Cabernet Sauvignon (カベルネ・ソーヴィニヨン)

ボルドーのメドックからこの品種の素晴らしいワインの生産が始まり、ボルドーのワインを通して世界中で高い評価を得ている品種。
小粒で果皮の固い晩熟な品種。乾いた土壌と温暖な気候が必要で、ボルドーより北部では、ロワール川中流域までが栽培の北限。
完熟すると、色、風味に加え、引き締まったタンニンが素晴らしい。
醸造と樽熟を慎重に行えば、最も長命で複雑で豊かなアロマを醸し出す。ボルドーではメルローやカベルネ・フランとブレンドされるが、チリや北カリフォルニアでは素晴らしい単品種ワインが出来る。世界中に最も広く行き渡った赤ワイン品種である。

 

Merlot
Merlot (メルロ)

この品種は、19世紀までは2流品種と考えられていたが、現在では、赤ワインの最高品種の一つである。
最高のメルロの生産地はポムロールだが、ボルドーから地中海沿岸や新世界各地で幅広く栽培され、まったく違う様々な生育条件や気候に問題なく適応している。
果粒が大きく肉付きがいい。果皮が薄いためタンニンの割合は低いから、熟成にも耐えるが早い時期にも飲める。早熟なこの品種の特徴は、やや色は薄いが、スパイスの効いた果実やプラムを思わせる芳しいアロマ、まろやかであっても存在感のあるタンニン、それでいて繊細な骨組みにある。
メドックではカベルネ・ソーヴィニヨンとよくブレンドされている。

 

Pinot Noir
Pinot Noir (ピノ・ノワール)

ピノ・ノワール種は、ブルゴーニュの歴史が育てた最高品種。
小粒の果実がぎっしり付いた房がマツカサの形に似ていることから、ピノ(pinot=松)の名が生まれたと言われている。
繊細で、霜や病気の影響を受けやすく、早熟な性質で、非常に優れていると同時に、気難しい子どものような存在。しかし、ブルゴーニュ地方のように温暖な時期が短い北部では、この品種の持つ成熟の早さが一つのメリットとなっている。特筆すべきは、テロワールによって、驚くほど様々な味わいの赤ワインを生み出すことである。
色は濃い方ではない。長く続くその後味と繊細なアロマを持つ。その柔らかなタンニンと優しくシルキーで溶けるような舌触りのワインは、熟成によって洗練された気品を醸し出す。
新世界の栽培家達も、自分の地でもと試みているが、この品種の気難しさ故、冷涼な極く一部の地域のみがその幸運に恵まれている。
単品種で使われ、ブレンドされることはめったにないが、シャンパンには、シャルドネに、ピノ・ムニエと共にブレンドされる

 

Syrah
Syrah (シラー)

シラー種は中世の十字軍が、イランのシラーズから持ち帰ったものと言われているが定かではない。この品種は、ローヌ河流域に広く栽培されているが、特に、ローヌ北部のコート・ロティやエルミタージュの急斜面の痩せて乾いた土壌でよく育っていて、色の濃い長寿の偉大な赤ワインを生み出している。
深みのある濃い色を持ち、スミレ、ブラックベリー、ブルーベリーのアロマはスモーキーでシャープ。タンニンもバランスよく持ち合わせている。
成熟期の遅い性質だが、近年フランスにおけるシラー種の栽培は大幅に高まっており、ローヌ河流域からラングドックやプロヴァンスへと拡がっている。
又、新世界でもオーストラリアのバロッサのような暖かい地域では濃密で豊かな力強いワインを造っているが、フランスとは全く異なる味わいである。世界中の栽培家達がこの品種に挑戦的実験を行っているが、そのワインの多くは、常に風味に富んだ切れ味をあとくちに残すものを持っている。

 

Sauvignon Blanc
Sauvignon Blanc (ソーヴィニョン・ブラン)

セミヨン種とのブレンドにより評判を呼んだグラーヴの白ワインが、このソーヴィニヨン・ブラン種を世界に広めたもとである。近年のワイン生産技術の進歩によって、そのアロマをより引き出す技術が定着した。
ロワールのサンセールやピイィ・フュメのような上質の石灰質土壌でよく育つ。幅広い適応能力を持つ品種だが、暑すぎると独特の香りと酸味を失ってしまう。従ってカリフォルニアやオーストラリアの多くの土地では重過ぎるものになりがち。
できるワインは、香りが鋭く、きわめて新鮮。生き生きとした豊かな味わいを持ち、比較的若いうちに飲むのがベスト。

 

Chardonnay
Chardonnay  (シャルドネ)

シャルドネ種は、発芽が早いため春霜や病気に掛かり易い品種だが、非常に適応性が高い品種で、北のシャンパーニュ地方から、ロワール河流域、南のラングドック地方まで広範に渡り栽培されている。
しかし、冷涼な北部の土地でこそ、そのアロマの豊かさと酸味のバランス、熟成向きの素質を開花さる。最高のシャルドネが、ブルゴーニュ地方、特に モンラッシュで生産されているのは全くの偶然ではない。
気品ある白ワインを生み出すシャルドネ種は幅広い複雑なアロマを持ち、ライムの花、桃、洋ナシ、蜂蜜、柑橘類を思わせるその洗練された芳香は、トップクラスの葡萄品種の証である。

 

RiesLing
RiesLing  (リースリング)

ライン河沿いに育った高貴種。白ワインの王と言われている。晩熟で冬霜に強い品種。ドイツの多くでは甘口ワインに仕立てるが、アルザスでは辛口を造るように、生産地によって全く違ったワインが出来る。又、華麗に熟成(オーク樽は使わない)させることも出来る品種でもある。
若いうちはデリケートなフルーツ香を帯びるが、熟成するにつれて、ペトロールと呼ばれる独特のブーケが出てくる。繊細さの中に華やかさもあり、ノーブルでエレガントな白ワインを造る。
20世紀の一時期、過小評価されていたが、近年再びゆっくりと流行し始めて、新世界の冷涼な地域でも栽培が始まり、良質なワインが生まれている。