「Marche(マルケ)」
と言う州名は、ゲルマン語の「辺境」を意味する「Merk」に由来する。アペニン山脈によって中央から隔離された土地柄故であろう。そのアペニン山地から東のアドリア海に流れ落ちるように開けているこの州は、3分の1が山岳地帯で、残りは殆どが丘陵で、山岳地帯から流れ出る数多くの河川によって造られたもの。州都は紀元前から続く港湾都市・アンコーナ。
その海岸線の一帯は、風光明媚な夏のリゾート地でもある。山岳地帯にあるウルヴィーノはルネッサンス期に栄えた学術都市で、ラファエッロやロッシーニの生地。
地中海性の温暖な気候に恵まれ、古くから土地利用が進み、葡萄だけでなく、オリーブや穀物(小麦)の産地として知られている。
ワイン造りは盛んで、DOC(G)ワインの生産は5%強で、20州の10番目。ここのワインは、日本においては総体的に知名度が低いから、コストパフォーマンスのいいものが多い。マルケを代表するワインの上級クラスが狙い目。
ワインの詳細情報はのDOCGとDOCの2つにページ分けした。最上部メニュー、及び地図上からも辿れます。
ワインは、しつかりしたきれいなルビー色で、独特の果実香を持ち、フルーティーで中程度のタンニンを含み、ややアルコールを感じる心地好い飲み心地のワインだが、マラスカや、リコリスの香りを含むものもあり、味わいは幅広い。
リゼルヴァでない通常のROSSO CONERO(ロッソ・コーネロ)>は、DOC。
このワインは、紀元前3世紀、古代ローマにアルプスを越えて攻め入ったカルタゴの将軍ハンニバルが戦場で病気に罹った馬にこのワインを飲ませたというエピソードが残るほど古く、プリニウスもアドリア海沿いで造られる最も優れたワインであると記してもいる。
モンテルプルチャーノ種については、多くの学者が調べているが、はっきりしたことは分かっていない。1800年代の初め、既にこの葡萄はマルケ地方からプーリア地方までアドリア海に沿って植えられていた。最初はサンジョヴェーゼ種の仲間と思われていたが、テモーラに住むデ・ボシス氏によって独自のブドウであることが確認された。
主生産者
Garofoli, Le Terraze, Umani Ronchi, Lanari, Fazi Battaglia,
(ガロフォリ、レ・テッラツェ、ウマニ・ロンキ、ラナーリ、ファツィ・バッターリア)
ヴェルナッチャ・ネーラ種(黒ブドウ)85%以上を使用し、40%以上の葡萄を乾燥させて糖度を高める規定になっている。
辛口と甘口のスプマンテ2種があるが、ナチュラルでアルコールに換算して13%以上を必要とされる。また甘口のドルチェは、残糖が1L当たり22g以上であることが条件とされている。
ワインは、生き生きとした深いルビー色で独特の花の香りを含み、果実味豊かなアロマを放ち、味わいのベースにわずかに苦味がある独特の<発泡性赤ワイン>。本来瓶内発酵のものであったが、近年タンク内発酵に多くが変えている。
非発泡性のものは、単にSERRAPETRONA(セッラペトローナ)を名乗るDOC。
19世紀末の学者、ディ・ロヴァセンダによると、当時、このヴェルナッチャ・ネーラ種はアンコーナ周辺で最も優れた葡萄あったとされている。もともとマルケ地方とウンブリア地方で多く栽培され、学者フェルチーニによってマチェラータに近いセッラペトローナの名前がつけられた。また、この品種はモローネ、あるいはヴェルナッチャ・ディ・コッレートなどとも呼ばれているが、トスカーナのサン・ジミニャーノやサルディーニャのオリスターノとは別の品種。地元では食用としても使われている。
主生産者
Serboni, Quacqarini Lanfranco, Colli di Serrapetrona, Quacqarini Alberto,
(セルボーニ、クアックアリーニ・ランフランコ、コッリ・ディ・セッラペトローナ、クアックアリーニ・アルベルト)
オッフィダは、マルケ州の最南端、州都・アンコナの80km南に位置する。
テシーノ川とトロント川の間にそびえる丘の上の歴史深い街で、近郊では古代ローマ以前の神殿が発見された。
<赤は>は、Montepulciano(モンテプルチャーノ)種主体(85%以上)。
<白>は、Passerina(パッセリーナ)種及びPecorino(ペコリーノ)種で造る。共に85%以上を使い品種表示されている。両品種共土着品種で個性的な辛口。
注目されている生産者が少なくない。
マルケ州のワインとして最も知られるワインである。このワインの歴史は古く、ローマ時代から知られるワインだった。
このワインを造る地域は、中心となる街・イエージの北西の丘陵地で、二つの地域に分けられる。オストラ、コリナルド、アルチェヴィア、ペルゴラなどイエージの北側の地域では通常のDOCとなるが、南側のイエージを含むアピロ、クプラモンターナなどの地域は、古くからこのワインが造られていた地域で、クラッシコ地区に指定されていて、「Classico」の付くDOC。
ヴェルディッキョ種は、マルケ地方に古くからあった品種で、葡萄の色がヴェルデ(緑色)であったことから、こう呼ばれるようになったと言われている。
葡萄は、トレッビアーノ・ディ・ソアーヴェ種、トレッビアーノ・ディ・ルガーナ種の仲間と言われ、マルケ州を中心にウンブリア、ラツィオなどでも栽培されている。
ワインにすると緑がかった麦藁色で、苦味があり、アーモンドの香りを含み、アロマがあって酸のしっかりした<白ワイン>になる。
このワインのボトルが魚に見立てられることもあり、魚料理に合うワインとしてのイメージが確立されている。アメリカ、ドイツを初めとする国に生産量の約8割が輸出されている。
このReserva(リセルヴァ)のみ、2010年DOCGに昇格した。
表記は、<Verdicchio dei Castelli di Jesi Reserva>
主生産者
Umani Ronchi, Bucci, Fazi Battaglia, Gioaccchino Garofoli,
(ウマニ・ロンキ、ブッチ、ファツィ・バッターリア、ジョアッキーノ・ガロフォリ)
マテリカの歴史は浅く、この地方でのワイン造りは紀元6世紀頃から行われていたものの、現在とは全く異なるワインで、近年、1970年代に入るまで、その品質で語るべきものはなかった。1970年代、近隣のレストランのソムリエたちによって見出され、今日さらに品質が向上してきている。
このReserva(リセルヴァ)のみ、2010年DOCGに昇格した。
表記は、<Verdicchio di Matelica Reserva>
主生産者
Belisario C.C. La Monacesca, Bisci, Gagliardi,
(ペリサーリオ C.C、ラ・モナチェスカ、ビシ、ガリアルディ)
アドリア海のこの地域では、イタリアには珍しく、若いロッソ・ピチェーノと魚料理を合わせる特殊な地域である。ワインはザクロ色がかったルビー色の<赤ワイン>で、チェリーやマラスカ、リクリスの香りを含み、軽くタンニンとアルコールを感ずる。スペリオーレになるとエーテル香を増す。品質には、ばらつきが少なくない。
主生産者
Boccadigabbia, Aurora, Bucci, VillaPigna, Caniette, Pilastri,
(ボッカディガッビア、アウローラ、ブッチ、ヴィッラ・ピーニャ、カニエッテ、ピアストリ)