Toscana 等中部6州・・・Umbria

Umbriaウンブリア

ウンブリアは、イタリアのほぼ中央に位置し、アペニン山脈の西側に広がる。山と丘と湖の織成す美しい盆地を中心とする内陸州。ローマに通じる様々な交通路が州内を走り、聖サンフランチェスコ大聖堂のあるアッシージをはじめとして、ローマ時代や中世の建造物があちこちに残されている城壁都市が沢山ある。州都ペルージャは、古代エトルリアに始まる観光学術都市で、織物業と食品工業も盛ん。

一方、「緑のウンブリア」と呼ばれる豊かな土地で、集約的農業が営まれていて、起伏に富んだ地形と河川が造る緑の丘陵が美しい風景を生み出している。冬は温暖で、夏は気温は上がるが風通しが良く、安定した地中海性の気候に恵まれている。
トスカーナ州の南に位置するウンブリアは、丘陵地帯もトスカーナから続いているから、ワイン造りにおいても共通点が多い。それがトスカーナの陰に隠れてしまう印象を与えてきたが、近年、近代的な醸造技術を背景に品質の向上が計られて、以前よりずっと注目を浴びる存在になっている。

詳細情報は、DOCGとDOCワインの2つに分けた。

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DOCG:Torgiano Rosso Riserva(トルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァ)

ワインはペルージャから南に16kmほど下った、テヴェレ川とウンブリア渓谷の間にある丘陵地帯で、オリーブとブドウの樹に囲まれた小さな街、トルジャーノで造られる。
トルジャーノは紀元前のエトルリア時代から砦の街として存在し、「ジャーノの塔」が残されている。

トルジャーノにおけるワイン造りの歴史は古代ローマに時代に遡る。
中世のヴエネデイクト派の修道院によってその葡萄栽培は発展した。ペルージャに残される12~13世紀の資料には、それを裏付ける記述がある。

しかし、現在のこの地のワイン造りの世界的評価は、このような歴史によるものではなく、大戦後、地元の地主・ジョルジユ・ルンガロッティの努力によるものである。彼は世界中のワイン銘醸地を回った後、高品質ワイン造りを決意し投資を惜しまなかった。ウンブリア地方のワインを世界に知らしめるべくワイン博物館を設立し、5ッ星ホテルの経営や様々なワインに関する文化的な活動を行なった。イタリア最大のワイン品評会「バンコ・ディ・アッサッジョ」もその一つで、長年主催しこの地方のワイン造りに貢献した。

こうした努力が実り、トルジャーノのワインは、1968年DOCに、そしてロッソ・リゼルヴァは1990年にDOCGに認められた。生産量は毎年8万本弱と少ない。

サンジョヴェーゼ主体(70%以上)でキャンティとほぼ同様の品種を使用した<赤ワイン>だが、この地方の気候が穏やかなことから、まろやかでソフトな味わいのワインである。生き生きとしたルビー色から熟成に従いガーネット色を帯びる。上品な果実香を含み、コクがあり、やわらかいタンニンがあって、バランスがいい。

主生産者
Lungarotti, Brogal Vini,
(ルンガロッティ、ブローガル・ヴィーニ)

 

DOC: Torgiano(トルジャーノ)


リゼルヴァでないこの通常のDOC・Torgiano(トルジャーノ)は、サンジョヴェーゼ50%以上のRosso(赤)だが、トレッピアーノ・トスカーノ50~70%のBianco(白) もあって、ワインは淡い色のフレッシュな若飲みタイプの辛口。<ロゼ>と国際品種で造るワインもこのDOCに認められている。

 

DOCG: Sagrantino di Montefalco (サグランティーノ・ディ・モンテファルコ)
産地・モンテファルコは、ペルージャの南、アッシジからスボレートにかけての地域で、標高の高い尾根沿いに位置する関係で、「ウンブリアの手すり」と呼ばれる。この尾根沿いの街・モンテファルコは、古代ローマ時代からの街で、街の二重の城壁は中世にが築かれた。

ワインは、土着品種・サグランティーノ種100%で造られる<赤>。
サグランティーノ種は、中世に既にモンテファルコで栽培されていたといわれるが、そのルーツは定かではない。フランチェスコ派の修道士がポルトガルから持ち帰ったという説もあれば、プルニウスの著書にあるイトゥリーオーラ種が起源であるという説もある。いずれにしても、現在はモンテファルコにのみ植えられている品種で、長い間この地方独自の品種として、地域の教会で守られてきた。
今日でも1500年代から続く厳しい規定に従い収穫される。当時は苗を切った者は絞首刑にされたという。甘口ワインとして造られていたが、近年辛口も造るようになり評価され、1993年、甘口のパッシートも含めてDOCGに認められた。

ワインは濃く深いガーネット色で、ラズベリーを思わせる甘い香りがあり、力強く、長期の熟成に耐えるしっかりした味わいを持つ。辛口はアルコール度数が13%以上、甘口は14.5%以上を必要とし、2年半以上の熟成を要する。

主生産者
Arnalldo Caprai, Colpetrone, Lungarotti, Antonelli, Rocca di Fabbri,
(アルナルド・カプライ、コルペトローネ、ルンガロッティ、アントネッリ、ロッカ・ディ・ファッブリ)

 

DOC: Montefalco(モンテファルコ)


このDOCは、モンテファルコの丘陵で造られる<赤>と<白>で、他のウンブリアの地域同様、白はグレケット種とトレッビアーノ・トスカーノ種主体、赤はサンジョヴエーゼ種主体で造られる。通常は日常消費用のワインだが、中には高い格の価値あるものもある。

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DOC: Orvieto(オルヴィエート)
オルヴィエートは、紀元前7世紀頃エトルリア人によって造られ、ウンブリア地方で最も古いワインと言われ、甘口ワインとして教皇庁御用達でもあった。戦後、親しみやすい辛口白ワインとして商業的に成功をおさめた知名度の高いワインである。

このワインは、凝灰岩の洞窟の中の温度の低いところで保存されたため、発酵が進まず糖分を残したままの甘いワインになっていた。今日でも、DOCにアッボッカート(薄甘口)、アマビレ(中辛口)、ドルチェ(甘口)が認められている。

産地はオルヴィエートを中心とする7つの市町村で、当地ではプロカニコ種と呼ばれるトレッビアーノ・トスカーノ種主体に、ヴエルデッロ、グレケット、マルヴアジア種などを加えて造られる辛口から甘口までの<白>。やや濃い麦藁色で上品な花の香りを含み、まろやかな味わいがある。

同地域では10年ほど前から、アリアニコ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、サンジョヴェーゼ種などの赤ワイン用のブドウも植えられるようになり、Rosso Orvietano(ロッソ・オリヴィエターノ)としてDOCに認められている。

主生産者
Bigi, Tenuta Le Velette, Antinori, Palazzone, Castello della Sala,
(ビジ、テヌータ・レ・ヴェレッテ、アンティノリ、パラッツォーネ、カステッロ・デッラ・サラ)

DOC: Colli del Trasimeno & Trasimeno(コッリ・デル・トラジメーノ&トラジメーノ)
トラジメーノ湖を囲む広大な地域。<赤>は、サンジョヴェーゼ種主体のもの、ガメイ種主体のもの、国際品種混醸造のものと多様。<白>はトレッピアーノ・トスカーノ種主体。共に若飲みタイプ。品質の巾も少なくない。

主生産者
Duce della Coerna, Fanini, Castello di Magione,
(ドゥーカ・デッラ・コルニャ、ファニーニ、カステッロ・ディ・マジョーネ)

DOC: Lago di Corbara(ラーゴ・ディ・コルバーラ)
コルバーラ湖北の小地域。カベルネ・ソーヴィニヨン種主体のものと、国際品種にサンジョヴェーゼ他地元種混醸のもの、それぞれ単品種のものと多様。<赤>のみ。多くは若飲みタイプだが、中には果実風味豊かな肉厚なものもある。

主生産者
Barberani, Salviano, Decugnano dei Barbi,
(ベルベラーニ、サルヴィアーノ、デクニャーノ・ディ・バルビ)