シチリア島は、イタリア半島の西南端、イオニア海に浮かぶ地中海最大の島である。州としてもイタリア最大の州である。緑の山や平地は少なく、岩石が露出した荒々しい山がちな地勢である。東部には島のシンボルのエトナ火山(3323m)がある。州都は島北部の港湾都市パレルモ。
紀元前8世紀ギリシャ人がこの島に植民したのに始まり、カルタゴ、ローマ、ゲルマン、ビザンチン、イスラム、ノルマン、スペインと、様々な人種と文化がこの島を舞台にして衝突し混合し、覇権を争った歴史を持つ。それ故、シチリアの歴史と文化の複雑さは、想像を絶するものがある。様々な文化が混然として残されているのはそのためである。古代ギリシャやローマの神殿が良く保存されているから観光地としても人気が高い。
典型的な地中海性気候で、夏にはサハラ砂漠からの熱風で高温になることも多いが、総体的に、気候に恵まれていたことから古くからブドウ栽培が行われ、紀元前7世紀の絵画や文献にワイン造りが記されていて、イタリアでも最も古いワイン産地である。しかし、現代に入り、組合組織により大量のワインが生産され、その大半がバルクワイン(瓶詰めではなく、ブレンド用ワイン)として売られてきた。従って、生産量ではイタリア全土で最も多い州のひとつとなっている。
近年、灌漑や冷凍設備の充実により、品質が向上し、海外に数多く輸出されるようになった。挑戦的生産者が輩出し、国際品種をも使った高品質なワイン(VdT)を送り出している。大きく変貌している、注目に値する地域である。
DOCとDOCGワインの詳細情報を下記に記す。
シチリア島の最初のDOCGで、2005年に指定された。「チェラスオーロ」はアブルッツォ地方ではロゼを意味するが、シチリアでは赤を意味する。
主生産者
Cos, Buccellat, Avide, Pianeta, Maggio Vini, Pobbio di Bartolone, Cos, Buccellat, Avide, Pianeta, Maggio Vini, Pobbio di Bartolone,
(コス、ブッチェッラート、アヴィデ、プラネタ、マッジョ・ヴィーニ、ポッジョ・ディ・バルトローネ)
ワインは、主にシチリア西部のトラパニ県で生育するカタッラット、インツォリア、グリッロ種〈多いほど良質〉で造る。一般的なのはベースとなるワインを濃縮した果汁(モスト・コツト)で甘くし、強化したものに,さらに樽での熟成に先立ってアルコールで酵母の活動を休止させた果汁(シフォーネ)を加えて造る。
強烈な木の香・カラメルのブーケと、豊かで、口あたりがなめらか、わずかに焦げたような香味を持つワインである。
色によって、黄金色はオーロ(oro)、琥珀色はアンブア(anlbra)、ルビー色はルビーノ(rubino)の3種に分類される。(ルビーノは、黒葡萄のペッリコーネ、ネーロ・ダヴオーラ,ネレッロ・マスカレーゼ種の使用が認められている)
甘さによって、セッコ-辛口(secco)、セミ・セッコ-中辛口(semi secco)、ドルチェ-甘口(dolce)の3種に分類されてもいる。
マルサーラの大部分はマルサーラ港にある大会社の手で造られている。
主生産者
Fiorio, Rallo, Pellegrino, De Bartoli,
(フローリオ、ラッロ、ペレグリーノ、デ・バルトリ)
主生産者
Rallo, Pellegrino, Spedafora, Rapitara,
(ラッロ、ペレグリーノ、スパダフォーラ、ラピタラ)
主生産者
エトナ山の山麓のブドウ畑は古く、白ワインを造っていた。現在は、エトナ山東側の火山灰地帯で<赤・ロゼ・白>が造られている。エトナは一時期評価を落としたが、最近復活した。
<赤>はネレッロ・マスカレーゼ種60%以上。ルビー色で濃密なブドウ香を持つボディーのしっかりしたワイン。
<ロゼ>は赤と同一品種で造る繊細な香りヲ持つ若飲みタイプの辛口。
<白>はカッリカンテ種60%以上。新鮮でソフトな調和のとれた麦藁色の辛口。
主生産者
Barone di Villagrande, Pellegrino, Benanti, Valle Galfina, Biondi,
(バローネ・デイ・ヴィッラグランデ、ペレグリーノ、ペナンティ、ヴァッレ・ガルフィーナ、ビオンディ)
主生産者
Hauner, Cantone Colosi, Barone di Villagrande,
(ハウネル、カンティーネ・コロージ、バローネ・デイ・ヴィッラグランデ)
パンテッレリア島は、シチリア島の南西の端のトラパニから南に110km、むしろアフリカに近い。
強烈な風の吹く、溶岩でできたゴツゴツとした岩肌むき出しの島である。ギリシャ語とアラブ語で風を意味するこの島では、強風は、時には50℃を越える熱風になるため、ブドウの苗は低く植えられ、畑は石垣で囲まれている。ブドウの収穫も8月から始まる。ヘクタール当たりの収量も少ない。地元でズィビッボと呼ばれるモズカート・ビアンコ種から<甘口白>が造られる。
ワインは濃い黄金色から琉拍色まであり、このブドウ独特の強いアロマがあり、後口にもマスカットの風味が残る。古典的スタイルのものだけに限定したて、以下の2つのDOCを名乗る。
パッシートは、強い太陽光に当て乾燥させたブドウで造る甘口で、アルコール度は14%以上、
熟成1年以上。輝くような琥珀色で豊かな芳香と力強さを持つ。
長期保存のきくリキュールタイプがあり、モストとアルコールの混合物を加え補強したもので、<Liquoroso-リクォローソ>と言う。
主生産者
Salvatore Murana, De Bartori, Florio, Donnafugata,
(サルヴァトーレ・ムラーナ、デ・バルトリ、フローリオ、ドンナフガータ)