New South Wales (ニュー・サウス・ウェールズ州) Australia

New South Wales

ニュー・サウス・ウェールズ州ワイン地図

オーストラリアのワイン産業の起源は、このニュー・サウス・ウェールズ州にあり、1790年代にシドニー周辺でブドウの栽培が始まり、1820年代になってHunter Valley(ハンター・ヴァレー)に広がった。
しかし、オーストラリアワイン発祥の地でありながら、ワイン産業の中核の座を南オーストラリア州に明け渡して久しい。それは、19世紀末から20世紀初頭に掛けてオーストラリアの国内消費及びイギリスの需要が酒精強化ワインに傾いて行った時期に十分対応できなかったことが大きい。

テーブル・ワインを造り続けてきたHunter Varrey (ハンター・ヴァレー)が、州内では唯一よく知られた産地だが、栽培量は、内陸部のRiverina(リヴァリーナ)の10分の1に過ぎない。

ハンター・ヴァレーを除けば、その他の産地の多くは、ワインブーム以降の20世紀末に活性化してきた地域である。

主要産地は、著名なHunter Varrey(ハンター・ヴァレー)とその西南に接するMudgee(マッジー)(以上は別ページにした)、その南、キャンベラとの間に位置する新興産地と言えるOrange(オレンジ)Cowra(カウラ)Hilltops(ヒルトップス)Canbera District(キャンベラ・ディストリクト)であろう。

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Hunter Valley  (ハンター・バレー)
Hunter Valley
伝統的なオーストラリアのワイン産地の中では最北に位置し、気候は亜熱帯。夏は大変暑く、秋は雨が多い。太平洋から吹く北東の卓越風が、著しい暑さをある程度やわらげる。夏の空はしばしば雲に覆われ直射日光が遮られる。年間降水量は750mmとかなり多い。
しかもその大半が、葡萄の出来不出来を左右する収穫期に集中しているから、広大なオーストラリアの中ではブドウ栽培の適地とは言い難い。
しかし、ワイナリーがひしめきあっているのは、オーストラリアにおいて、昔から全面的にテーブルワインに力を注いだ地域で、ワイン産業の重鎮たちが住んでいることと、大都市・シドニーから車でわずか2時間の距離にあり、ワイン目当ての観光客や投資家たちのメッカだからであろう。

緩やかな山と丘に囲まれ、いくつかの川が流れるオーストラリアでも非常に美しい土地である。シドニーに近いから、週末の観光地でもある。レストラン、ホテル、ゴルフコースなどの施設がよく整備され、ワイン・セラーも次々と建てられている。

地理的にはハンター・リバーを中心に発展してきた古い産地、Lower-Hunter-Valley(ローワー・ハンター・ヴァレー)と、1960年代に開発された北に位置する、Upper-Hunter-Valley(アッパー・ハンター・ヴァレー)に分けられる。

Lower Hunter Valley


(ローワー・ハンター・ヴァレー)は、ブロークンバック・レンジ(Brokeback Range)の麓の比較的平坦な谷間の最南端にあり、緩やかな傾斜の丘陵地帯となっている。
標高の高い地区は火山性の赤土で、ミネラル風味を葡萄に凝縮させ、とりわけシラーズに適している。ハンター・シラーズと言われる伝統的造りは、重厚な力強さこそ持ち合わせていないが、古いオークの大樽が複雑性を加味し、香りと風味に特異なものを持つ。

標高の低い地区は白い砂地やローム層で、伝統的な白ワイン品種・セミヨンが栽培されている。4~5年で楽しめるものが多いが、10年以上の長寿のセミヨンでも名高い。

ワイナリーは、POKOLBIN (ポコルビン)の町を中心に現在80社以上あるが、オーストラリアを代表するワイナリーがひしめいている。
McWilliam’s-Mount-Pleasant(マックウィリアムズ・マウント・プレザント)
Lindemans (リンデマンズ)
Tyrrell’s Vineyards(ティレル・ワインズ)
Wyndham Estate(ウィンダム・エステート)等。

Upper Hunter Valley


(アッパー・ハンター・ヴァレー)は、ハンター川はもとより、ゴールバーン川 (Goulburn River) やジャイアンツ・クリーク (Giants Creek) などの支流が流れていて、その河川に沿って畑が広がっている。適度な肥沃度と水はけの良い黒色の沈泥壌土の土壌で、セミヨンとシャルドネが栽培されている。

この地の代表的ワイナリーは、Rosemount Estate(ローズマウント)。白ワインブームの80年代、特にシャルドネで非常に高い評価を受け、輸出で成功し急速に拡大、現在ではオーストラリアを代表するワイナリーである。

Mudgee  (マッジー)
マッジーはシドニーの西北250kmに位置し、オーストラリア大分水嶺(Great Dividing Range)の西側斜面にある。反対側(海側)斜面がハンター・ヴァレーである。
アボリジニの言葉で 「丘の上の巣」を意味しているように、標高は高く約500m。内陸にあって、かなり暑い気候であるが、この標高のため夜は涼しい。湿度と降雨量は少なく、日照時間は長い。ごく一部を除いて灌漑が必要。

土壌は、中性の茶色埴土の上に多少酸性の砂質壌土が重なり水はけはいい。収穫時期はハンター・バレーより1ヵ月ほど遅くなる。そのため葡萄の成熟期間が長く、良質の果実が実る

この地は、大手のワイナリーはなく、こぢんまりとまとまった産地ではある。ハンター・ヴァレー同様古い産地だが、現在昔から続いているのはクレイグモアー(現Poet’s Corner Wines)だけである。シャルドネを早くから導入し、ハンター・バレーのTyrrell’s(ティレル)と競った。先にワインを販売したのはティレルの方だが、シャルドネとセミヨンの白で良いものが造られている。
オーストラリアでの有機栽培の先駆者である、Botobolar Vineyard(ボトボラー)もこの地にあって、自然農法の葡萄のワイン生産を行なっている。ワインとしては、良質の赤ワイン、特にシラーズが有名である。

マッジーは、早くから「マッジー・ワイン呼称協会」を設立し、自主的なラベル規制をしている産地で、フランスに似た、かなり厳格な原産地呼称制度を採っている。他の産地からのブドウや原料ワインをブレンドすることが往々にしてあるオーストラリアの中にあって、特異な存在である。

Mudgee

Orange (オレンジ)
Orange

1983年、Bloodwood(ブルードウッド)のスティーヴン・ドイルが最初に葡萄を植えた地である。標高1426mのカノボラス山の麓にある。

火山性土壌で、標高が高いから冷涼で、繊細な造りのシャルドネとカベルネ・ソーヴィニョンの産地として名を上げた。
後発の産地だが、Rosemount Estate(ローズマウント)によって一躍有名地になった。リースリング、ソヴィニョン・ブラン、赤ではシラーズが多くなってきているが、メルローも栽培されている。

Coura  (カウラ)
Coura

オーストラリア大分水嶺(Great Dividing Range)の西側に切り込む形の谷間の緩やかな斜面に多くの畑がある。暑く乾燥した大陸性の気候で、主に白ワインを産し、風味豊かなコストパフォーマンスのいいシャルドネの栽培地と言える。

1973年にCowra Estate(カウラ・エステート)が、最初に進出。1990年代に、Rothbury(ロスビュリー)Richmond Grove(リッチモンド・グローブ)などが続いた。Brokenwood(ブロークンウッド)などのブティック・ワイナリーが近年栽培量を増やしていて、セラー販売も増え観光客も集めている。

Hilltops (ヒルトップス)

この地は、標高が高く450m以上で、完全な大陸性気候。昼夜の寒暖の差が大きい。
土壌は、玄武岩に浸透した暗赤色花崗岩埴土で、水はけがいい。夏と秋は乾燥するから灌漑は不可欠。

ヒルトップスのパイオニアは故ピーター・ロバートソン(Peter Robertson)。もとは大規模な牧畜農家であったが、1975年、放牧業の傍らブドウ栽培とワイン造りを始めた。
1988年に、McWilliam’s(マックウィリアムズ)がそれに続き、シラーとガベルネの秀逸なワインを造ってヒットさせた。
栽培品種はカベルネ、シラーズ、シャルドネ、セミヨン。

Canberra District (キャンベラ地区)
Canberra District

オーストラリアで最も人口の多い、シドニーとメルボルンの2つの都市のどちらを首都とすべきか合意できなかったために、中間の地が選ばれて出来たのがキャンベラで、オーストラリア連邦政府ならびに行政の中心地である。
そのオーストラリア首都特別地域 (ACT)は、1920年代に農地を開拓してできた場所で、ニュー・サウス・ウェールズ州から切り離された地域である。

Canberra District


(キャンベラ・ディストリクト)は、この地域の北部に集中しているブドウ園と、隣接するニュー・サウス・ウェールズ州の一部のブドウ園を包含している。
政府に勤める科学者が趣味で葡萄を植えたのが始まりである。多くの畑は、山岳部に属する標高の高い斜面に位置し、冷涼地域ならではのワインを造る。Clonakilla(クロナキラ)がこの地の代表するワイナリーだが、1997年、Hardy(ハーディ)も250haの畑を購入し、処理能力の大きいワイナリーを作っている。
シャルドネやシラーズが主品種だが、繊細なニュアンスを持つピノ・ノワールも生まれている。