California Histry of Wine
カリフォルニアワインの歴史

18世紀後期

南北アメリカの葡萄移植の起点になったのはメキシコ。その時期は、スペインによるメキシコ征服後の、1530年前後とと言われている。

フランシスコ派のスペイン人修道士たちは、現在のメキシコから「エル・カミノ・レア(王の道)」と呼ばれる道を北上しながら、当時、未開の地であったカリフォルニアに布教活動を行った。1769年、ユニベロ・セラ神父はサンディエゴにミッション(伝道所)を開き、そこで、ミサ用のワインを造るためにブドウ栽培を始めた。これが、カリフオルニアにおける最初のブドウ園。
栽培された葡萄は、俗に「ミッション=Mission(バイス種)」と呼ばれる品種である。

修道士たちはその後も北上を続け、ソノマに至るまで21のミッション(伝道所)を開き、カリフオルニア各地にワイン造りを伝えた。

 

19世紀中期…ゴールドラッシュ時代

1848年、メキシコ領からアメリカ領となったカリフォルニアで、金鉱が発見され、かの有名なゴールドラッシュが始まる。この時期、何万人という移民がカリフォルニアに押し寄せた。大半がヨーロッパ系の移民で、その中に、ワイン生産の知識を持った者もいた。

そのひとりがハンガリーの貴族・アゴストン・ハラスティ。彼はソノマ・ミッションの葡萄園を買い取り、ワイナリーを作ると共に、ヨーロッパから300種のブドウの苗木を輸入して葡萄栽培を普及させた。カリフォルニアのワイン造りを大きく飛躍する礎を築いたので、後に「カリフォルニアワインの父」と呼ばれている。

 

アゴストン・ハラスティ

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20世紀初頭…フィロキセラと禁酒法
ヨーロッパで猛威をふるっていた害虫フィロキセラ(ブドウ根アブラムシ)が、カリフォルニアにも蔓延するが、カリフオルニアワインに壊滅的な打撃を与えたのは、1919年に制定された禁酒法。

禁酒法の下では、販売目的のワイン製造はすべて禁止。宗教儀式用あるいは医療用として許可を受けたワイナリーのみに製造が許された。その結果、ほとんどのワイナリーが廃業に追い込まれた。

 

アメリカ禁酒法
20世紀後期・・・技術革新の新しい時代へ
1933年には禁酒法が廃止された。ワイナリーの再建が徐々に進み、ブドウ栽培とワイン醸造のシンクタンクであるカリフォルニア大学デイビス校の研究指導により、1950年代にはそれぞれの土地に適したブドウ品種の栽培方法や醸造方法が確立されて、アメリカのワイン造りは「量」から「質」へと新たな時代に入る。 そして1966年、ロバート・モンダヴィがワイナリーを設立。ステンレスタンクの使用など、カリフォルニアの革新的で画期的なワイン造りが始まる。

安定した品質のワインを低価格で大量に供給することが求められていた1960年代、ぶどうは温暖で平坦なセントラル・ヴァレーを中心に栽培され、ワインは大規模なワイナリーによって醸造されたが、ロバート・モンダヴィに代表される高い志を持った生産者はより冷涼な気候を求め、ナパ・ヴァレーやソノマ・ヴアレーといった、太平洋に近い土地に畑を拓くようになった。

1970年代に興ったブティック・ワイナリーでは、シャルドネのスキン・コンタクトやオークの小樽内発酵、自然酵母での発酵や発酵前のピノ・ノワールの低温マセレーションなど、さまざまな実験が繰り返された。こうした試行錯誤によって取捨選択された技術は、1980年代に入って巨大ワイナリーにも取り入れられ、カリフォルニアのワイン醸造技術は世界最先端のものとなつた。

これに対し、ぶどう畑での変革が叫ばれるようになつたのは、新種のフィロキセラの発生によって、ぶどう樹の植え替えが不可避となった1980年代後半以降で、クローン・セレクションやキャノピー・マネージメント、リモーート・センシングといった最新のぶどう栽培技術が導入され、個々の区画に適したぶどう品種やクローン、台木が選択される一方、密植を行って1本のぶどう樹から収穫する果実数を少なくし、より風味の際立ったワインが生産されるようになつた。

特に、1988年のフランス政府との合意に基づき、公式にフランスのぶどう樹が輸入可能になると、ディジョン大学で選抜されたピノ・ノワールやシャルドネのクローンが苗木屋から直接入手可能となつた。これらのクローンから生まれた1990年代のピノ・ノワールやシャルドネの質は驚嘆すべきもので、特にソノマや北ではメンドシーノ、南ではサンタバーバラといった冷涼地域の斜面の畑のものは、最上のブルゴーニュのワインを脅かしつつある。

1990年代を通して、生理的成熟を遂げた、より糖度の高い果実から、よりアルコール度数の高い、インパクトの強い味わいのワインが造られる傾向にあったが、近年では、先端的な生産者が行き過ぎたこの傾向を見直し始め、よりデリケ一トでバランスの取れた、自然な果実の風味を尊重したワインづくりに向かいつつある。

 

1976-Paris
「パリ・ティスティング」(1)
当時、カリフォルニ ア・ワインの評価は低く、「カリフォルニア・ワインはプロヴァンス(一部の生産者を除いては、 大量生産のただ酔うための安ワイン)のよう」という一般的見解を、一夜にして覆し、カリフォ ルニア・ワインを、世界の表舞台に躍り出すきっかけになったもので、タイム誌が、 「Judgement of Paris(パリの審判)」と言う見出しで、その結果記事を発信した。その具体的内容は、

 

審査員

・ピエール・ブレジョー (国家AOC委員会(INAO)の検査委員長)
・ミシェル・ドヴァス (葡萄栽培学協会)
・ピエール・タリ (グラン・クリュ・クラッセ委員会の事務局長&CH・ジスクールのオ ーナー)
・オーベール・ド・ヴィレーヌ (ロマネ・コンティのオーナー)
・オデット・カーン (ワイン誌「ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス」編集者)
・クロード・デュボア (グルメ雑誌「ル・ヌーヴォー・ギド」のディレクター)
・「レ・グラン・ヴェフール」オーナー (ミシュラン3ツ星レストラン)
・「タイユヴァン」のオーナー (ミシュラン3ツ星レストラン)
・「トゥール・ダルジャン」のソムリエ (ミシュラン3ツ星レストラン)

パリ・ティスティング

 

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出品ワイン

カリフォルニア

<赤>
・Clos Du Val-1972 (クロ・デュ・ヴァル)
・Heitz Cellars-1970 (ハイツ・セラーズ)
・Mayacama-1971 (マヤカマス)
・Ridge Monte Bello-1971 (リッジ・モンテベッロ )
・Freemark Abbey-1969 (フリーマーク・アビー )
・Stag's Leap Wine Cellars-1973 (スタッグス・リープ)

<白>
・Spring Mountain-1973 (スプリング・マウンテン)
・Freemark Abbey-1972 (フリーマーク・アビー)
・Veedercrest-1972 (ヴィーダークレスト)
・David Bruce-1973 (デヴィッド・ブルース)
・Chalone Vineyards-1973 (シャローン)
・CH Montelen-1973 (CH・モンテリーナ)

 

 

フランス

<赤>
・CH Leoville-Las-Cases-1971 (レオヴィル・ラス・カーズ)
・CH Montrose-1970 (モンローズ)
・CH Haut-Brion-1970 (オー・ブリオン)
・CH Mouton-Rothschild-1970 (ムートン・ロートシルト)

<白>
・Meurault-Charmes/Roulot-1973 (ムルソー・シャルム・ルーロ)
・Batard-Montrache/Ramonet-1973 (バタール・モンラッシェ・ラモネ)
・Puligny-Montrachet Les Pucelles/Leflaive-1972 (ピュリニー・モンラッシェ・ルフレーヴ)
・Beaune Clos des Mouches/Joseph Drouhin-1973 (ボーヌ・クロ・デ・ムーシュ/ジョセフ・ドゥ ルーアン)

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「パリ・ティスティング」(2)結果
*赤文字はカリフォルニア (カッコ内は点数)

<赤>
1. Stag's Leap Wine Cellars-1973 (127.5)
2. CH Mouton-Rothschild-1970 (126)
3. CH Haut-Brion 1970 (125.5)
4. CH Montrose-1970 (122)
5. Ridge Monte Bello-1971 (105.5)
6. CH Leoville-Las-Cases-1971 (97)
7. Mayacamas-1971 (89.5)
8. Clos Du Val-1972 (87.5)
9. Heitz Cellars-1970 (84.5)
10. Freemark Abbey-1969 (78)

<白>
1. CH Montelena-1973 (132)
2. Meurault-Charmes/Roulot-1973 (126.5)
3. Chalone Vineyards-1974 (121)
4. Spring Mountain-1973 (104)
5. Beaune Clos des Mouches/Joseph Drouhin-1973 (101)
6. Freemark Abbey-1972 (100)
7. Batard-Montrachet/Ramonet-1973 (94)
8. Puligny-Montrachet Les Pucelles/Leflaive-1972 (89)
9. Veedercrest-1972 (88)
10. David Bruce-1973 (42)
「パリ・ティスティング」(3)30年後のリターンマッチ
2006年5月、ロンドンとナパで同時に、リターンマッチ試飲会が行われた。今回は、赤ワインのみだが、銘柄もヴィンテージも同じワインが再度、審判された。(30年 の瓶熟もので、熟成能力を問うた)
審査員の顔ぶれは異なり、ワイン評論家、マスターソムリエ、マスターオブワインなど、英米で実力が認められたワイン界のプロ。

結果はまたしてもカリフォルニアの圧勝。

*赤文字はカリフォルニア (カッコ内は点数)

1.Ridge Monte Bello-1971 (137)
2.Stag's Leap Wine Cellars-1973 (119)
3.Heitz Cellars-1970 (112)
4.Mayacamas-1971 (112)
5.Clos Du Val-1972 (106)
6. CH Mouton-Rothschild 1970 (105)
7. CH Montrose-1970 (92)
8. CH Haut-Brion-1970 (82)
9. CH Leoville-Las-Cases-1971 (66)
10. Freemark Abbey-1969 (59)

 

30周年を記念して、ジョージ・ティバーが『Judgement of Paris 』を執筆した。その日本語翻訳版『パリスの審判』が2007年4月に出版されている。

 

*1986年9月、New Yorkで、アメリカのワイン業界8人の審査員による、この「30年後のリターンマッチ」の前哨戦が行われた。パリ対決の時と同一のワインが用意された。

 

結果は次の通り。

1. Clos Du Val 1972
2. Ridge Monte Bello 1971
3. CH Montrose 1970
4. CH Leoville-Las-Cases 1971
5. CH Mouton-Rothschild 1970
6. Stag's Leap Wine Cellars 1973
7. Heitz Cellars 1970
8. Mayacamas 1971
9. CH Haut-Brion 1970